【企画本編】ぼくらの門出に“おめでとう”を (ページ8)

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◇ ページ8

「……私(わたくし)達、これで本当に卒業ですのね」

ふいに発せられたその言葉に、一同時が止まったかのように静まり返る。だがその静寂もほんの一瞬で、またすぐに誰からともなく会話が始まるのだった。

「ほんまにあっという間やったなぁ、全然実感湧かへんわ」
「四月から晴れて高校デビューか。俺らもついにばらばらになるんだな」

しみじみとした様子で呟く天音。一方の雪欺は淡々と事実を述べただけのように思えるが、この場にいる彼らにとってはそれ以上の重みがあるように感じられたのもまた事実である。
幼稚園の頃から交流が始まり、義務教育を終える今日という日まで、たとえクラスが離れようとずっと一緒に過ごしてきた六人。そんな彼らも次の進路――高校受験によってついに離れ離れになってしまうようだ。
長年の付き合いで培われた絆の深さが、別れの辛さをより強調させる。

「ま、これからも何やかんやで集まるんちゃう？ウチらに限って、そんないきなり会わんくなることはないやろ」
「どうでしょうね。高校生はわたしたちの想像する以上に忙しいですよ、きっと」

どこか楽観的な伊織の言葉を、紫乃はばっさりと切り捨てた。
彼女には現在進行形で高校生活を送る姉と兄がいる。そんな彼らを近くで見てきたからこそのこの発言なのだろう。同じく高校生のきょうだいを持つ天音にも思い当たる節があるようで、紫乃の言葉を聞くとそっと目を伏せた。
とはいえ紫乃も、長年を共にした幼馴染みとの別れに対しては思うところがあるようだ。感情の起伏が少ないことに定評がある彼女だが、今回ばかりは表情が険しく見える。

「お待たせ！何の話してたの？」

と、いつの間にやら父親へのレクチャーが完了していたようで、陽奈がこちらに戻ってきていた。話の流れでやや沈んだ空気になっている幼馴染みたちだが、流れを知らない陽奈はいつも通り朗らかに語りかける。
その問いに最初に答えたのは雪欺だった。「中学卒業して、俺らもついに離れ離れになるのかって話」と端的に、やや無慈悲なまでに先程の会話を要約する。これには端から聞いていた伊織が「待て待て、何で別れる前提なん!?」とすぐさま噛み付いた。

「そんな寂しいこと言わんといてや〜、天音ちゃん悲しいわぁ……しくしく」

そんな彼女に便乗するように天音が雑な泣き真似をすると、雪欺もさすがに堪えたようだ。「…………ごめん、さすがに言い過ぎた」と簡潔ながら謝辞を述べる。