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「任せてね、バッチリ撮るから!」
「何をおっしゃいますの?あき、早くお入りくださいまし」

意気揚々と撮影準備を整える陽奈だったが、被写体の一人である麻知が上品な所作で彼女を軽く手招きする。それを見た陽奈はしばらく呆けたような顔をしたかと思うと、「……えっ、私も映るの!?」と驚愕の表情を浮かべた。
だが、そもそも今日の主役は卒業生――つまり、写真を撮る側に立とうとしている陽奈自身もまた主役の一員に相違ない。
まるでそんな自覚がない彼女に、伊織が「そらそうやろ!!」と関西仕込みの鋭いツッコミをかます。様子を見ていた男子二人は思わず苦笑いだ。

「うぅ、でも私のカメラで撮りたいし……」
「誰かに撮ってもらえば良いのでは?」

頭を悩ませる陽奈に、紫乃が呆れ気味に声をかける。
それは至って単純な提案だが、陽奈にとっては天啓そのものだったようだ。渋い顔をしていた彼女は幼馴染みの言葉を聞くと「!……しのの、ナイスアイデア!」とたちまち笑顔になる。

ちょうどその時、彼らの保護者が子供たちを追ってやってきた。その集団の中に自身の父を目ざとく見つけると、陽奈はそんな彼に駆け寄っていく。

「あっ!ねぇお父さーん、写真撮ってー!」

やがて陽奈が連れ帰ってきたのは、目元に傷をたたえた強面の男性だった。
白波瀬陽斗(あきと)――裏社会の人間だと言われても全く違和感がない彼だが、そんな彼が陽奈の父親であることは幼馴染み一同分かりきっている。とはいえ、やはりあの顔でこちらに来られるとつい身構えてしまうのは人間の性だろうか。
そうとは知らない陽奈はカメラを首から外し、父に手渡すと使い方を教授し始める。

「えーと、ここ押せばいいの?合ってる?」
「そうだけど、ちゃんとみんなが入るように――って、そこは触っちゃだめだって!」

陽斗が慣れないカメラの操作に四苦八苦するのを見守る陽奈。きっと内心はらはらしていることだろう。
自分の娘から厳しい駄目出しを受ける陽斗の姿は、彼の風貌とは似つかわしくない光景であることも相まって笑いすら誘う。
撮影予定の場所に取り残され、しばらくそんな様子を遠巻きに眺めていた五人。すると、麻知がおもむろに白波瀬父娘(おやこ)から視線を外したかと思うと、他の幼馴染みの方を振り返って口を開いた。

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作者名:春乃四葉 | 作成日時:2024年3月6日 19時

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