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「みんなー！こっちで写真撮ろ〜！」
校門前に掲げられた『卒業式』の看板付近から、耳触りの良い少女の声が響いた。
声の主は、今回の卒業生の一人である
やがて陽奈の呼びかけに応じた五人の少年少女が彼女のもとに集まった。その風貌からしてそれぞれ系統の異なる彼らだが、六人は幼稚園時代から今まで実に十年以上の付き合いがある、いわゆる“幼馴染み”と称される存在である。
「全然咲いていませんわね……満開の桜の下で卒業なんて、すごく画になりそうですのに……」
「小説ならよくある状況ですけれど、現実ではそうもいきませんよね」
「まだ三月の頭だしな。この時期にはそうそう咲かないだろ」
彼女らの眼前に佇むのはほとんど枝だけの桜。わずかにつぼみが付いているだけのそれを見つめながら、六人の中でも最も小柄な少女――
一方、彼女の隣に立つ
「何だかんだ、幼稚園から今まで卒業式に桜咲いてたことないよね？やっぱり時期が悪いのかな〜」
「せやったっけ？ウチ全然覚えてへんわー、言われてみればそんな気もするけど」
「さすがあき、よく覚えてるなぁ」
首に掛けた立派なカメラをいじりながらそう何気なく口にした陽奈。だが、物心ついているかも怪しい時期の出来事ということもあり、他の子どもたちはピンと来ていない様子だ。
「そんなことより……しろ、写真撮りたいんじゃなかったか？」
「あっ、そうだったそうだった！みんな並んで〜！」
雪欺の言葉に、陽奈は思い出したかのように他の五人を定位置につかせカメラを構える。
中学校の入学時に買ってもらって以降、このカメラは彼女ら幼馴染み六人組の数々の思い出を記録してきた代物だ。今日もそのレンズは、持ち主の大切な幼馴染みたちを捉えている。
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作者名：春乃四葉 | 作成日時：2024年3月6日 19時
