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「帰っちゃったのかな…。」
家に帰っている途中。スマホのトークアプリを開き、数分前彼に送ったメッセージを確認する。グルッペンと表記されたトーク画面に映る、未読のままのメッセージ。
今日用事でもあったの?
なんて、うざったいだろうか、一々。
削除しようかと唸っていると、声をかけられた。見知らぬ男性。
声を掛けてきたというのに、話そうとする気配のないその人に首を傾げたのだが、それと同時ぐらいに目の前に突き立てられた刃物。
サバイバルナイフ、というのだろうか。鋭利なそれは、私の恐怖心を酷く掻き立てた。
「だ、誰か。」
助けて、なんて言う間もなくその人の手が口元を覆う。ナイフを向けられたままその場に押し倒された。
こんな時に限って、人通りの少ない道を通ってしまうなんて。
声に成らない声を出すも、もがくなんてことは到底出来やしない。目尻から涙が伝う。
不意に、相手の手が制服のブラウスへと掛かった。煽られる恐怖感と鳴り止まない危険信号。
とっくに日も暮れかけていて、相手の顔なんて見えやしなかった。音もなく外れていくブラウスのボタン。
誰か助けて。誰でもいい、どんな方法でもいい、私を。
ぎゅっと目を瞑った。一番に浮かんだのは、彼の顔。グルッペンが来てくれれば、なんて。
「Hilfe!Das ist ein Notfall!」
そんな叫び声がした。どこの国の言葉か、なんて分かりやしなかったが。
ふと乗られていた腰部分への圧迫感が消えて、口元が解放された。
恐る恐る目を開けると男性はいなくて、放課後に見た女子生徒が立っていた。どうしてこの子が。
「遠野 A、大丈夫？」
「あ、えっと、はい。」
寝転んだままだということを思い出し、起き上がった。心配そうにこちらを覗き込む例の少女。
ひやりと肌を撫でる冷たい風により、開いていたブラウスのボタンをいそいそと留めていく。そうか、私今。
「泣いてる。」
先程までの自分の置かれていた状況をやった理解したからか、涙が次々と頬を伝っていく。
彼女はハンカチを差し出してくれたが、大丈夫だと遠慮しておいた。
「ありがとうございました。」
なんとか立ちあがり制服をはたいてから、彼女に深々と礼をする。生憎涙は止まらなかったが。
彼女が来てくれないと今頃。なんて想像するのはやめた、きっと恐怖で動けなくなってしまう。
「Bitte sch�・n.えーと、…どういたしまして？」
ぎこちなく微笑んで優しく背中を撫でた彼女は、ピエタのマリアだと思った。
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稚都(プロフ) - 白猫さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると、とても励みになります。今後ともこの作品をどうぞ宜しくお願いします。 (2019年2月12日 18時) (
レス) id: 170c23df6e (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - めっちゃ好きです！ (2019年2月12日 15時) (レス) id: 02b81b04f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稚都 | 作成日時：2019年2月11日 15時
