イチバン【青】

ライバル ページ3

「じゃあ、僕こっちやから行くな〜」

「ヤスー！また後でな〜」

『ま、またね！ヤスくん！』


大倉くんと私は授業が一緒だから、先にヤスくんを校舎までお見送りするのが恒例になっている。大倉くんがいるときはふわふわなヤスくんだから、そのヤスくんを引き出してくれることだけが大倉くんの良いところ。


「あ、A…お弁当、ありがと」


校舎に入る前、思い出したようにヤスくんが振り返って、サラリと言う。すぐに背中向けて行っちゃった。けど、けど、けど…


『久々に名前呼んでもらえたーーー！！！』

「ちょ、はしゃぐなや。恥ずいわ」

『だって！見た？あの去り際の！あの感じ！』

「はいはい。見た見た」

『もー！ヤスくんだいすきーーー！！！』


思わず大倉くんの腕をバシバシ叩いてしまう。嬉し過ぎて大興奮。高校のときは、Aちゃんってフツーに呼んでくれてたけど、付き合い始めてからは中々名前で呼ばれることがなくて。

たまにこうして、不意をついて呼ばれるから、その度に好きが溢れてしまう。


「おい、スマホ鳴っとる」

『や、ヤスくん！？も、もしもー「うるさい(ブチッ」……切られた』

「さっきの、ヤスくんだいすきーっていうやつ、聞こえてたんとちゃう？」

『え？あ…は、恥ず/// 』

「今更照れる？おっそいわ〜」


ヤスくんに聞かれていたと思うと、ものすごく恥ずかしい。ラインにごめんね！ってメッセージ入れてみたけど、安定の既読スルー。いいもん。めげないもん。電話くれたの嬉しかったもん。内容は…気にしないことにする。

大倉くんとは、履修してる講義が同じだから、なんだかんだで一緒にいる時間が長い。お互い同性の友だちももちろんいるけど、自然と隣で講義を受けていることが多い。


「古今東西。ヤスのかわいいところ」

『ぜんぶ』

「それは反則」



退屈な授業は、専ら筆談。
お互いが認め合うヤスダーだから、勝負に決着がつくことはない。気付いたら共感し合って、安田最高！で終了。

他には、画像フォルダのヤスくんの写真を見せ合いっこして交換したり、ヤスくんの天然語録を語り合ったり、共通の趣味があると話題は尽きない。
ライバルだけど、戦友？みたいな！


『あー！大倉くん、待ち受けまたヤスくんとのツーショット…！！！うらやましい！！！』

「ええやろ〜？」


私の待ち受けは、卒業式の日に撮ってもらったヤスくんとツーショット。これ以外ないんだもん。ライバルは一歩先を行っている…悔しい！

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