たった一言で ページ12
「っはぁ…あっつ、」
何処から走ってきたんだろう。お弁当箱受け取ってちょっとしか経ってないのに、すぐにヤスくんの息は整った。襟元をパタパタとささて風を入れる立ち姿。かっこいいです。
『お弁当箱、ありがとう…先に帰ってごめんね？』
「…なぁ」
鞄からハンカチを出して、ヤスくんの首筋に流れる汗を拭う。下ろしてある前髪で隠れるおでことか、こめかみとか、ここも、ここもと拭いていると、その手をヤスくんが掴んだ。
「なんで先に帰ったん？」
『そ、それは…ちょっと、諸事情で』
「その諸事情を聞いてんねん」
射抜くような視線から逃げるように顔を背けると、掴まれた手をぐっと引かれて、そのまま顔を覗き込まれる。ヤスくんの目の前にある顔を直視できなくて、目線だけを晒した。
「おい、ちゃんと目見て」
『白状しそうなのでいやだ…』
「白状しろ」
『…言いたくない』
「言え」
『いっ言わない！』
繰り返される押し問答。ここは折れたくない。話すとしても、ちゃんと心構えしてからじゃないと、泣いちゃう。今の精神状態じゃ泣いちゃう。
「もーええ」
『っ…ご、ごめん』
「…なんで、言うてくれへんねん」
ヤスくんの呟きに、胸がキュッと締め付けられる。言いたいけど言えない、言う勇気が出ない、そういう気持ちも言わないと伝わらない。分かってはいるけど、分かって欲しいって求めてしまう。
『っヤ、ヤスくん…』
「もう、分かったから。話したないならそれでええし」
帰るで、って背中を向けるヤスくん。分かったって、何を？何も話さない私に呆れた？諦めた？自分が蒔いた種なのに、泣きそうになってしまう。その場に立ちすくんで動けなかった。
「なにしてるん…ほら、帰ろ？」
歩き出さない私の手を取って、下から顔を覗き込んでくるヤスくん。泣きそうな私に気づいて、バツが悪い顔で小さく息を吐く。
「言いたくないって言うたんお前やで」
『それは…っそうだけど…』
「やから、無理矢理話そうとせんでええって」
『でも、』
ええから、ほら、と時計を気にして手を引くヤスくん。どうすることが正解か決めかねて、もだもだうじうじして動けないでいる私。
「なんなんもう…めんどくさ」
面倒くさい。ヤスくんのこの一言が、私の胸にずっしりのしかかってきた。もう、ヤスくんの本音の本音の本音が溢れたようだった。
ポッキリ、グラグラだった心は簡単に折れてしまった。
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蒼乃碧(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました！そして…完結おめでとうございます！コメントを拾って下さって本当に嬉しかったです！ (2020年2月12日 21時) (
レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - ゆんゆさん» ゆんゆさんコメントありがとうございます！無事完結することができました^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - みきさん» みきさん！毎回更新の度にコメントして下さってありがとうございました！わたしも最後まで更新できてうれしいです…！！！引き継ぎどうぞよろしくお願いします^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結おめでとうございます！主人公のこと大好きなヤスくんが読めて嬉しいです！今後の作品も楽しみにしています！ (2020年2月12日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！読めるだけで嬉しいです。続きも楽しみにしています！ (2020年2月3日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おゆ | 作成日時：2019年8月4日 0時
