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いや、クロはこの迷子に関してなんとなく心当たりはあるのだ。バラムに誘導されつつ何回目かの休憩をしていた時に、なんとなく見かけた記憶がある気がする。
(私はちょっと見かけただけで、声もかけてないし……)
ただそれだけだったのに。他の悪魔たちがしているように、視線をすぐにそらしてぽろぽろと泣く悪魔の子供を見ないようにしたはずだったのだ。
困惑するクロは眉毛を八の字に下げて、ローブを掴み続ける子供を見つめた。
「ええと、君、どこから来たの……？」
「……」
「お、お名前は？」
「……」
「えぇ……」
クロのローブを掴み続ける子供は、大きな目に薄い涙の膜を張りながらも、小さなプライドを守るかのように押し黙ったままだ。
そんな子供の態度に、クロはすっかり参ってしまった。どうしたらよいのだろうか。あいにくクロもバラムもここら辺に詳しくない。それに先行きを急いでいる身でもあるのだ。
「……バラム君、ここら辺に迷子の子供を任せられるような施設とかってないの？」
一縷の望みを託して、バラムに聞いてみる。
「迷子を任せる？」
「こう、放送とかで親御さんを呼び出すサービス的な。私が前にいた場所にはあったんだけど……」
「ないよ。残念だけど」
しかし、はっきりと告げられた言葉にがくりと肩を落とした。
これだけのたくさんの悪魔が出てくるような場所に、何故迷子センターの一つもないのか。託児所なんかもあれば、子供を預けて買い物ができるだろう。クロはまだ見たこともない魔王に対して、子供向け施設を作ることを切実に祈った。
「普通悪魔は他の人への情が薄いから。クロさんみたいに初めて会う子供に優しく声をかけてあげるほうが珍しいよ」
ほら、とバラムが顔を向けたほうを見る。たくさんの大人の悪魔たちが忙しそうに市場を行き交う。店に勤めている悪魔も景気良く声を張り上げて、懸命に客引きをしていた。
その様子は、バラムとクロと、そして迷子の子供なんて目に入らないとでも言うかのようだった。
大人たちはまるで空気みたいに彼らを扱う。クロはその事実にゾッとした。子供が3人も身を寄せて困っているのに、助けようとしないなんて。
「……わ、」
クロの不安を感じたのだろう。悪魔の子供が、ローブではなくクロの脚に身を寄せてきた。
こんなに小さな子供が助けを求めている。
人間で、精神は立派な大人であるクロが動くには十分な理由だった。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようでとても嬉しいです！！ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします！！ (2023年3月12日 11時) (
レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください！ (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほるすたいん猫。 | 作成日時：2023年3月6日 0時
