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風に吹かれて、クロのコートが舞い上がる。
バラムと共に新しく買ったコートは、アドラメレクから与えられたものよりも薄くて軽い。加えて装飾も可愛らしく、クロはなんだかんだでいい買い物をしたな、とぼんやりと思った。
「クロさん、大丈夫？ 疲れてない」
ふと、前を歩いているバラムがクロに声をかけてきた。バラムに言われて、クロは初めて自分の息が上がっていることに気が付いた。
「うん、だいじょうぶ……」
「……やっぱり一旦次の広場で休もうか」
「待って、本当に大丈夫だから、それにこのペースだと城下に行けないって言ってたよね……」
「いいから、ほら」
そっとバラムに手を取られて誘導される。
普通であればここまでしなくても、と思うかもしれないが、クロは自分が思ったよりもずっと軟弱であることを自覚しているため、大人しくバラムの指示に従う。
城下まで時間がかかることは想定していた。距離が遠いことに加えて、クロが空を飛べないためだ。そのことは学校を出る前にバラムと共に確認していたが、徒歩のみでの移動を行わない悪魔にとって、クロはどれだけもどかしい存在であることか。クロはバラムに対する申し訳なさでいっぱいだった。
また、クロはどうも線が細く虚弱だ。バラムが気をつけなければフラフラとマーケットの人波に攫われてしまうのだ。要らない気を使わせていることに、大人のプライドが辛うじて残っているクロは苦しかった。
「はい、飲み物」
「ありがとう……」
買い物客のために時々設定されている広場のベンチに腰掛ける。するといつ買ったのか、バラムが飲み物を差し出してきた。それに大人しく口をつける。
バラムもすんなりとクロの隣に座った。
「えっと、今いるのがだいたいここら辺かな。この感じだとここの森には行けそうだね」
「そう……」
休憩ついでにパラリと簡易版の地図を広げて、現在位置を確認した。
最終目的地の魔関署まで、おおよそ三分の一程度進んだくらいだろうか。まだまだ目的地まで遠いことを理解したであろうクロの表情が、露骨に曇ったのをバラムは見逃さなかった。
「クロさん」
「……野宿になっちゃうよね。ごめん」
「いや、謝らないで。僕は大丈夫だから。それにまだ取り返せる範囲だしね」
安心させるように笑って見せれば、つられるようにクロも眉間のしわを緩めた。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようでとても嬉しいです！！ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします！！ (2023年3月12日 11時) (
レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください！ (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほるすたいん猫。 | 作成日時：2023年3月6日 0時
