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「あらららららら??」
アドラメレクは力の抜けた自分の手を心の底から不思議そうに見つめたあと、それはそれは嬉しそうな顔をして、バラムに背を向けて走り出した。
「クロ! あなた面白いことできるじゃない!」
きゃあきゃあと楽しそうにはしゃぎながらクロを抱きしめる。
大きな手が、クロの脚、腰、首、腕、そして顔を舐めるように撫で回し、それでも足りないと言うようにアドラメレクは体をぶるぶると震わせていた。
側から見ても興奮が読み取れる。
「ふ、ふふ、悪魔の成長細胞と元の体との相性が良かったのかしら……、でもそれだけでは成り立たない。むしろ素体が人間であることが重要……? 悪魔の欲を刺激する何かがあって命令を聞いてしまうということ……ふ、ふふふ、なら逆ならどうなる? 非検体を増やして、子供を増やして、そうだわ、魔獣も試してみましょうか……」
ぶつぶつと何かを呟きながら、口からはとめどなくヨダレが滴り落ちる。
「ああ、クロ! あなたって本当に最高のペットだわ……! いつだって私に驚きをくれるのね……♡」
「……」
「もう早く帰りましょう! 今日は血を抜くくらいで勘弁してあげるわ♡」
クロが小さな声で「わかりました」と答えると、ちゅ、とアドラメレクは額にキスを落とした。
バラムはそれをただ見ていることしかできない。
その視線に気がついたのだろう、アドラメレクは底意地の悪い、ニタリとした笑顔でバラムを見てクロに言う。
「あは、そうねぇ、クロ♡ どうせ“最後”なんだから、もう2度と会えない少年に、挨拶でもして来なさいな♡」
悪意しかない提案だった。
クロへの悪意なのか、それともバラムへの悪意なのかはわからない。しかし、その悪意に触れた少年少女はぴくりと体を反応させた。
「行って来なさい、クロ♡」
「……はい」
「ッ……」
アドラメレクの一言を合図にして、クロは力なく地面に伏せるバラムの元へとやってくる。
「ク、ロさん……!」
「……」
一歩一歩近づいてくるクロを前に、バラムは力を振り絞って名前を呼んだ。返事はなかった。
それでも声をかけ続けた。
「クロさん……!」
「……」
「僕たちは、悪魔だ……! 君の欲を優先させるべきだ……」
諦めないでほしいと思った。
優しく、心の強い彼女が、これ以上脅威に晒されてほしくないと、バラムは本気で願った。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようでとても嬉しいです!!ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします!! (2023年3月12日 11時) (レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください! (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほるすたいん猫。 | 作成日時:2023年3月6日 0時