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たかだか悪魔の迷子一人に対して好意的な悪魔が30名程度集まった事実に、バラムは心底混乱していた。
こんなこと普通じゃありえない。
(どうしてこんなに協力的なんだ……?)
集まった悪魔たちは家系能力で子供をあやしたり、数名は空を飛んで子供と特徴の合致する悪魔を探しに行ったり、周辺の店や子供の行った店に聞き込みを始めている。
(動きが早すぎる……)
あまりにも的確で統率の取れた悪魔の動きに、バラムの背筋は寒くなった。
悪魔が協力的であることはもちろん、協調性の高さに慄いたのだ。普通の悪魔であれば、ここが悪魔学校であれば、ここまですんなり自身の能力を把握して役割を分ける動きができるだろうか。
まるで、『何者か』に指示されているような、操られているような悪魔たちの動き。それに疑問を抱いていない大人たち。
(……もしかして、)
なんとなく、バラムは大人たちが動いた原因がクロではないかと考えた。
洗脳系の家系魔術を無意識に使ってしまったのではないだろうか。
「ありがとうございます……!」
「……おかあさん」
「よかったね、もう少しで会えるかもしれない』
「うん……!」
しかし、クロが無邪気に子供に笑いかける姿を見て、バラムは考えていたことを放棄した。
何にせよ、良いじゃないか。彼女があんなに素直に笑うのであれば、大人たちの行動の原因なんて。
大人たちの協力のもと、それから30分もしないうちに、子供の母親が見つかった。
母親は子供と一緒に行ったぬいぐるみの店付近で発見されたらしい。
何度も礼を言う母親に心の底から、良かったですね、と笑うクロがひどく印象的で、バラムは自分の心臓がぎゅうと握られるような感覚に陥ったことを自覚した。
⚪︎⚪︎⚪︎
「え、これから城下に? 子供二人で!?」
無事に子供が見つかり、集まった大人たちも徐々に解散し始めた頃には、もうすっかり夕焼け空から夜の深い濃紺の空に変化していた。
かろうじて西に赤い空が見えるが、もう何か行動するには遅すぎる時間だ。
そんな中で一言二言、例の迷子の母親と会話をしている中でクロが城下を目指している話をすると、母親がひどく驚いた顔をしたのだ。
「危ないでしょうに。なんでまたそんなに急いで……」
「……少し、用事がありまして」
「そうなの……」
バラムが言いにくそうに答えれば、母親は察したようにそれ以上追求してこなかった。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようでとても嬉しいです!!ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします!! (2023年3月12日 11時) (レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください! (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほるすたいん猫。 | 作成日時:2023年3月6日 0時