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とんとんと子供の背中を撫でてやっていると、目の前に黒い影が落ちた。
ついで風が巻き起こり、重力に従ってどさりと何かが着地する。
「バラム君」
空から子供の親を探していたバラムだった。
大きな黒い羽を器用に折りたたみ収縮させて衣服の中にしまいながら、彼は申し訳なさそうな顔をした。それでも一応クロは彼に成果を尋ねる。
「どうだった？」
「いや、色々探してみたけれど……」
「そう……」
クロの言葉があからさまに落ち込む。肩が落ちたのを明確に感じたのだろう、隣の子供が埋めていた顔をパッと離して彼女の顔色を窺ったあとで、バラムにも視線を寄こした。
子供はひどく敏感だ。幼い少年の申し訳なさそうな顔から、親が見つからなかったことを悟ったのだろう。
徐々に顔を歪めて、次の瞬間にはボロボロと大粒の涙を流していた。
「う、うぅ〜……」
「あ、わ、待って、泣かないで、ごめんね不安にさせて」
急いでクロは子供の涙をぬぐい視線を合わせる。バラムも足早に子供に近づいて、自分の膝が汚れるのも考えずにかがんで、子供の顔を覗き込んだ。
「ごめんね、ちゃんと探してくるよ。だからもう一回お母さんのこと教えてくれる？」
バラムの声はとてつもなく優しい。しかし子供にとっては母親がいない事実があまりにも大きすぎるのだろう。
首を振って泣くばかりでこちらが理解できる言葉を発しようとはしなかった。
子供が泣き続ける姿に、バラムもクロも辛くなってくる。
(悲しいのが、伝染しちゃう)
特にクロはアドラメレクから少しの痛みで絶望するように精神や感覚の過敏化の魔術をかけられており、子供の涙にひどく感情を揺さぶられる。
「……クロさん？」
「あ、」
気が付けば、子供と同じように両目から水滴がぱたりと落ちていた。
異変に気が付いたバラムに指摘されて意識してしまってからには、もうどうにも止まらないようだった。
幼い子供の背中をさすりながら、自分の涙の面倒をみることはできなかった。
「ごめ、この子にちょっと感化されちゃって……」
止めなくては、バラムに迷惑がかかるし、この子供も余計に不安になってしまう。
「可哀そうで、でも力になってあげられなくて、助けてって思っただけ……」
泣くクロたちの隙間を強い風が吹いた。あまりに強い風で、クロが被っていたフードが落ちる。クロの落とした涙が、風にのってどこかへと飛ばされてしまったが、涙は未だに乾かずに流れ続けていた。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようでとても嬉しいです！！ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします！！ (2023年3月12日 11時) (
レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください！ (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほるすたいん猫。 | 作成日時：2023年3月6日 0時
