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好きなものを語る楽しさに、警戒心も薄れたのだろう。子供の口は止まらない。
「いつかね、おかあさんがほんもののくまさんをみせてくれるってやくそくなの」
「ほ、本物って動物園とか、あ、いや魔獣園？」
「んーん、きたのもり！！ ほんものの狩りをみたいの」
(動物園とかであってほしかった……)
流石は模型と見間違うほどのぬいぐるみを購入する本物志向である。実際の生活を観察したいのだろう。いや良いことだが、良いことなのだがクロは何処か釈然としなかった。
「でもあぶないからうんとおおきくなったらねって。おかあさんいじわるなの」
そこまで元気よく語っていた子供が、急激にトーンダウンする。
母親に言われたことを気にしているのか、それとも今母親とはぐれてしまった事実を噛みしめてしまったのかはわからない。
しかしまた目に涙が浮かび始めてしまい、クロは露骨に狼狽えてしまった。とにかく話を続けておしゃべりに集中させなければ。
「あー、えっと、森は魔獣がいっぱいいるから危ないもんね。強くなって、いつか行けるといいね」
「べつに、まじゅうはあぶなくないもん」
気を使ったつもりの会話が、余計に子供の口を尖らせる。
「まじゅうなんておかあさんがいっぱつだもん。つよいからだいじょうぶだもん」
「おお、絶対的な信頼……」
「まじゅうがあぶないんじゃなくてね、」
ことり、と子供がクロの腕に頭を預ける。その重みにどきりとしつつ、クロは子供の言葉に耳を傾けた。
「『あくまもどき』にさらわれちゃうから、もりにいっちゃいけないの」
子供だましを自分は分かっているんだぞ。そう言いたげに子供はぎゅっと口をへの字に曲げていた。
クロは人間界でも魔界でも聞いたことのない言葉にひっかかりを覚える。人間界でいうところの幼い子を脅すときに使う山姥や幽霊などと同じだろうか。
「悪魔もどき……？」
「あくまみたいなのにあくまじゃない『ばけもの』なんだって。ひとりでいたらつれていかれてこわいことされるの。おねえちゃんきいたことある？」
「いや、初めて知った」
「ほら！ ぜったいそんなのいないのにね。おかあさん嘘ついてるんだ。ひどいや」
憤りを隠せないのだろう、子供は宙に浮いた足をバタバタと暴れさせた後、ぐっとクロのローブに顔を埋めた。
ふるふると小さな体が震えている。
「おいていっちゃうし、ほんとひどいよ……」
クロはそんな子供の背中を撫でてやることしかできなかった。
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ほるすたいんねこ(プロフ) - 海姫さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようでとても嬉しいです！！ゆっくりの更新ではありますが、お付き合いくださいませ。よろしくお願いします！！ (2023年3月12日 11時) (
レス) id: 4b2c935aae (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です。表現方法も綺麗で楽しく読んでます。更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください！ (2023年3月6日 0時) (レス) id: d925a11138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほるすたいん猫。 | 作成日時：2023年3月6日 0時
