《大型コラボ》十人十色のバレンタイン《歌い手》 (ページ36)

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《本命、一緒に作ってくれる？》志麻ページ36

志麻side

突然届いたAからのLINE。
それが原因で俺はこの正午だとはいえまだ冬を感じさせる寒空の下、あいつの家の玄関前で待っている。

ふざけんな、入れろや寒いわ！なんて言ったら
ふざけんな、まだ着替えてないんだよ！と返される。

誘ったのはAのくせに生意気で自分勝手で。

ほんまになんでこんな女好きになったんだろ。
幼馴染のAと俺。約5年の片思い。今までのバレンタインは何故か一度もチョコを貰えていない。

それどころか作るのを手伝わされるくらいだ。
何を隠そう今日もチョコ作りに駆り出されたわけで。

突如、ドアの向こう側からドタドタ足音がして、バンっと音を立てて勢いよくこちらにドアが開く。

「お待たせ、志麻！今準備終わったよ！早く入って！」

「いやお前のせいで待っとったんやってば」

冷静にツッコミを入れつつAの家に入る。

「あれ、今日お前の母ちゃん居ねえの？」

「いないよ～失敗食わされんのやだからってさ。」

相変わらずこいつは俺を男として思っていない。ちょっと辛いけど、その分俺には安心してくれてるって思うと少し優越感を感じる。

「んで？今年は何作るん？」

「えーとね、チョコチップクッキーを作ろうかと。」

「ふうん、ええんやない？材料…もそろっとんな。ほんじゃ作ろか～」

たわいない話をしつつ、手際よく作っていく。最近渡す友チョコが増えてきたからその分大変だけど話しながらだと案外辛くない。時折見せる弾けるような笑顔に目をうばわれると「ちょっと聞いてるの!?手も止まってるしぃ～！」なんて怒られる。

やっと人数分作り終え、ラッピングも済ませる。

「ふぃ～…終わったぁ…おし、じゃあ俺かえ…」
「あの、さ。」

帰ろうとした俺の腕を掴まれ、引き止められる。

「ん？なんや？」

「本命チョコ、作りたい、んだけど。」

震えて突っかかった小さい言葉を区切り、俯いた顔を上げる。

「本命、一緒に作ってくれる？」

時計の針はもう3時を回っていた。