《大型コラボ》十人十色のバレンタイン《歌い手》 (ページ16)

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《雨粒チョコレート》天月ページ16

「天月くん！チョコレート受け取ってください！」

「うん、ありがとー」

今年も君宛てのチョコレートは
山のように積み上がる。

...

私のクラスの天月くん。

本名や星とか月が好きな本人からつけられたあだ名で呼ばれる彼は学校中からモテモテだった。

誰にでも優しくて、頭もいい、歌も上手だってことは有名な話で他校にも彼のファンは多い。

まるで少女漫画に出てくる男の子、

みたいなそんな感じ。

そんな天月くんは、

「ごめん、A、待った？」

「……ううん、」

「待たせてごめん」

「だから、待ってないから大丈夫。

……話したいことがあるって言ったのは私だしね」

透明な雨が降り続く外を眺めながら机の上のカバンを手に取る。

困ったような表情の天月くんに行こうか、と言って歩き始める。

「ねえ、A……話って」

「歩きながら話そう」

面と面向かって話せる話じゃ無い。

私の隣で歩幅を合わせて歩いてくれる天月くん。

ちらちらと何度か視線を向けられる。

廊下に貼られたカレンダーの今日の日付には"チョコレート持ち込み禁止！！"の文字。

高校生にもなってお菓子持ち込み禁止なんて、と思う。

当日の今日にはたくさんの女の子が先生にチョコレートを取り上げられていた。

あの中に天月くん宛てのチョコレートはいくつあったんだろう。
きっと、たくさん。

天月くんも困った表情で、でも心なしか嬉しそうに受け取っていたから男の子は楽しみにしてた人もいたんじゃ無いかと思う。

外で静かに降り続ける雨が、少しだけ強まった。

「……天月くん、あのね、

……別れよう」

顔を見て言うことはできなかった。

...