【黒死牟】この恋は心が保たない。弐

罪の告白＊漆 ページ10

＊


Aの身体には、赤い花が沢山咲いていたのだ。

言い方を変えれば、軽い内出血、もしくは痣。


その花は言わずもがな、黒死牟がつけたものだった。

(いつの間に…！？)


花は、胸や背に咲き乱れ、我が物だと主張すると同時に少し痛々しい。


「…分かってはいたが…。少し、きついな」


そう言って、義勇は顔を歪めた。

(…黒死牟さん…。まるで、忘れるなって言いたいみたい。
忘れられませんよ、貴方のことは…。

だって本当に愛してたんだもの…)

黒死牟は、今までこういう事はしてこなかった。
花は、ある意味所有物だという証明だ。

(そうか、あの時…)


別れを切り出した後、なぜか気を失ったようだった。
おそらくその時かもしれない。

(ごめんなさい黒死牟さん…。本当に、どこまでも優しい人…。
別れると言った私に怒るでもなく殺すでもなく…黙って出て行かせてくれた…。
でも卑怯よ…。私は簪置いて来て未練を断ち切ろうとしたのに、こんなにいっぱい…
この数は、さすがにやりすぎだと思うけど…。
忘れるなんて到底無理じゃないですか。一体どんな気持ちでこんなことしたんですか)


義勇は、相思相愛の証であるその花を目の当たりにし、すでに心が折れかかっていた。


Aの表情を窺った。
切なげに、悲しそうで…だがどこか愛おしそうに花をなぞる。

｢ごめんなさい義勇さん…
やっぱり、無理です…。貴方に失礼だわ｣

｢……｣

Aは頭を下げると、部屋を出た。

＊

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