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「幽霊でも見たのか?そんな顔してる」
雨は結構降っている。なのに、その人は何事も無いかの様に唯立っているのだ。
「あぁ、うん、そうか。聞きたい事があるんだろ?」
フードを深く被り直して私の元へ近づいて来る。その表情は、優しく微笑んでいて。慌てて傘をその人に傾けた。
「まさか来てくれるとは思いませんでした」
「ちょっとの間待ち伏せしてたって言ったら──怒るか?」
「…いえ、大丈夫です。でも不審者扱いされますからね、それ」
少し考えたけれど大した問題ではないかと止めた。雨の音で、互いの声が搔き消えそうだと心配になりながら公園へ向かう。その間──私と弔さんは何も話さなかった。
弔さんの方が背が高いという理由で──普通に考えたら、そっちの方が危なくないし当たり前なのだが──傘は奪い取られてしまって、手持ち無沙汰な私は彼の手に目をやる。人差し指だけが宙に浮いて、まるで壊さない様にと持っているみたいだ。でもそれを突っ込む気も起きず、すぐに視線を外した。
10分位かけてから屋根のあるベンチに辿り着き、傘を閉じる。適当にそれを立てかけてから座れば、少し離れた先に座り込んだ彼。表情は、分からない。
「風邪とかひきません?大丈夫ですか、雨に濡れてましたし」
「大丈夫だ」
心配するなとでも言いそうな、返し。
あんなに聞きたい事や悩んでいた事があったというのに、本人を前にすると何も浮かばない。それに加えて、私を待っていたという弔さん本人も何かを話そうとしないので──話してはいけないという謎の緊張感に見舞われている始末。こういう時に、気の利いた言葉を投げかけられたら一番良いのだろうけれど、残念ながら何も浮かばない。この時ばかりは気の利かない自分に怒りさえ覚える。
サァァァ──…なんて雨の音が唯一、私と彼の間を取り持っていてくれた気がした。
「お前はさ」
沈黙を破ったのは
「どっちつかずなの?」
何かを懇願する様な顔をした、弔さんだ。
「…えぇっと…話の趣旨が」
「ヒーローになりたくない、まぁその経緯は分かるし俺もそう思う、うん」
「でもさぁ…ヒーローが嫌い──ってわけじゃあ、無いんだよなぁ?」
ずいっと何故か距離を詰めてくる。
「それは何で?偽善に埋もれた、ましてや私利私欲の奴らもいるのに、何で嫌いじゃ無い?」
手が触れてしまうくらいの近さだ。
「教えて」
鈍く光る赤い瞳が、変に私の心を掴んで離さなかった。
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noise - 面白いですがもう少し文と文の間を開けた方が読みやすいですね、更新頑張ってください。 (2018年10月8日 3時) (レス) id: c7ddf1a0db (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - 志乃さん» コメントありがとうございます、応援嬉しいです…頑張っていきますね! (2018年9月25日 2時) (レス) id: e7696dbe06 (このIDを非表示/違反報告)
志乃(プロフ) - 応援してます (2018年9月23日 8時) (レス) id: 9e6db2f27b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゴリラ満開 | 作成日時:2018年8月26日 1時