[肆] 八頁 ページ10
刺青はいくつ集めたのかと桜紅が聞くと、牛山は家永に食事を与えながら話し出した。
牛「こっちにある刺青の暗号は……この俺…牛山辰馬とここにいる家永、土方歳三。油紙に写した複製の暗号が2人分。そして尾形百之助が茨戸で手に入れた1枚……合計六人分だ」
尾形が笑いながら髪を撫で付けると上を向く。
尾「変人とジジイとチンピラ集めて、蝦夷共和国の夢をもう一度か?一発は不意打ちでブン殴られるかもしれんが政府相手に戦い続けられる見通しはあるのかい?一矢報いるだけが目的じゃあ、アンタについていく人間が可哀想じゃないか?」
後ろに手をついて椅子に座る土方の顔を覗き込む。広げられた新聞の先で土方は笑っていた。
尾「「のっぺらぼう」はアイヌなんだろ?」
永「鶴見中尉はそこまで掴んでいたか」
尾「のっぺらぼうが殺したアイヌたち……七名分の遺留品に共通点があったそうだ。男たちの小刀や煙草入れ。それら全てによく見ると新しい傷が付けてあった」
『アイヌの葬式では死んだ人間があの世でも使えるように副葬品に傷をつけたり、破壊してこの世での役目を終わらせるそうですね。死体を残虐にもバラバラにしておきながら丁寧に全員の所持品に傷をつける行為はどこか懺悔のような物を感じます』
尾「なぜ殺した?殺された七名は各地の村の代表者で和人と戦う武器を買うため金塊に手をつけた。のっぺらぼうの目的がアイヌによる北海道独立ならば、どうして仲間割れした?殺された7人が金塊欲しさに裏切ったのか?」
桜紅の耳が微かな紙の擦れ音を拾う。振り向くと一瞬土方と目が合ったような気がした。新聞を置いた土方は手を頭の後ろで組みながら口を開く。
土「おそらく、のっぺらぼうはアイヌに成りすました極東ロシアのパルチザンだ」
牛「なに?それ…」
『パルチザンって…内戦や革命でゲリラ的な非正規の軍事活動をする民兵組織ですよね?確か、ロシア極東にもアムール川周辺の少数民族から寄せ集まった多数の遊撃隊が存在しているとか』
永「ほぅ…よく知ってるな」
『無駄に知識はあるので』
土「ロシアといっても一枚岩じゃない。白系ロシア人が支配する帝政ロシア。レーニン率いるユダヤ系の共産党。そして極東に住む少数民族などで構成されたパルチザン。ロシア国内ではこれらの勢力が三つ巴になって殺し合っている」
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伊瀬(プロフ) - 176さん» ありがとうございます!二章も引き続き頑張りまっす!! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
176 - 一章お疲れ様でした!二章も楽しみです!作品とっても好きです!頑張って下さい!応援しています! (2019年11月10日 22時) (レス) id: b5e0f112ee (このIDを非表示/違反報告)
伊瀬(プロフ) - 、さん» すみませんでした!ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月10日 19時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊瀬 | 作成日時:2019年11月10日 19時