[伍] 五頁 ページ20
『ヤバいって?』
杉「男だらけの兵舎に寝泊まりするって、普通に考えてさ」
『考えたことなかったな』
杉「うっわ…危機感無さすぎでしょ」
『そもそも避けられてた事の方が多いし、迫られたなんてことは…』
そこでふと浮かんだのが宇佐美の顔だった。
杉「えっあるの!?」
『いや、なんで私も顔が浮かんだのか分からない…』
杉「心当たりあるからじゃないの?」
『そういうのじゃないと思うけどなぁ…』
杉「…まぁ、あんたの素性をとやかく聞くつもりはないよ。前にも言ったけど、あんたには恩がある。アシㇼパさんも懐いてるみたいだし…」
『君はもっと容赦がないと思ったよ』
杉「勘違いするなよ。"その時"がくれば、あんただろうが迷わず殺す」
目の奥に潜む獰猛な殺気が桜紅の顔をしっかりと捉えていた。
『君、そんな忠犬だった?』
杉「ねぇ俺の話きいてる?」
─────
杉「用心して他の人間とは出来るだけ接触せずに月形の樺戸監獄まで移動した方がいい。土地の人間の目撃情報などをつたって追跡されるからな」
ア「見ろ杉元、トゥレプタ チリがいる。ヤマシギだ。山菜を採りに行く女の季節になると、ヤマシギはこの土地へやって来る」
杉「なんか掘ってるね。虫でも探してるのかな?」
ア「エサを掘り出す長いクチバシがアイヌの使うオオウバユリの根を掘る道具に似てるから『ウバユリを掘る鳥』と呼ばれている」
『勉強になるなぁ』
杉「美味いの?」
ア「脳ミソが美味い」
横にいた尾形が銃を構えて立ち上がった。
ア「おい!尾形やめておけ」
尾「なんでだよ。食うんだろ?」
ア「一羽に当てられたとしても他のが逃げてしまう。ヤマシギは蛇行して飛ぶので、その銃の弾じゃ当てるのは難しい」
アイヌのやり方は枝でヤマシギが通りたくなる通路を作って、くくり罠を沢山仕掛けるという、習性を利用したものだった。アシㇼパの指示の元、皆で大量の罠を仕掛けていった。
((スス…
『…?』
微かな物音に目を開けると、丁度林へと消える尾形の姿が見えた。皆を起こさないように桜紅も慎重にその場から離れ、尾形の後を追う。
『(かなり離れた所まで来たな)』
尾形の足が止まる。その先にはヤマシギが三羽おり、その向きに銃口を向けていた。桜紅は少し離れた木陰で様子を見守る。
((ドンッ
まず一羽を撃ち抜くと、驚いて飛び立つ二羽もあっという間に撃ち落とした。
その姿がなんだか懐かしくて、桜紅は目を細めた。
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伊瀬(プロフ) - 176さん» ありがとうございます!二章も引き続き頑張りまっす!! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
176 - 一章お疲れ様でした!二章も楽しみです!作品とっても好きです!頑張って下さい!応援しています! (2019年11月10日 22時) (レス) id: b5e0f112ee (このIDを非表示/違反報告)
伊瀬(プロフ) - 、さん» すみませんでした!ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月10日 19時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊瀬 | 作成日時:2019年11月10日 19時