[伍] 二頁 ページ17
『…これじゃ動けないな』
会って間もない自分のどこがそんなに気に入ったのか。猫はただ座るどころか毛繕いまでし始めた。こうも寛がれてしまっては背を正すのも気が引ける。かと言ってこのままでは体勢が辛い。桜紅が考えていると、ふと背中にあった重みが消えた。横を見れば、アイヌの少女が猫を抱き抱えていた。
「可愛いな」
小さく笑う顔はとても愛くるしく、近くで見て気付いたが、青い瞳に少しの緑が混じっている。
『動物好き?』
目線を合わせて座る桜紅は在り来りな質問を投げかけた。
「見るのも食べるのも好きだ」
『はは、そっか。…良ければ君の名前を教えて欲しいな』
チラリと杉元の表情を伺えば、少し警戒しているように見える。
「アシリパ」
『どういう由来?』
「"新しい年"。私は"未来"と解釈してる!」
『未来…』
自信に満ち溢れている彼女がとても眩しくて目が離せなかった。
『素敵な名前だな』
桜紅が微笑むと、アシリパは少し顔を赤くして視線を下に向けてしまった。どうしたのかと顔を覗き込むと、小さく跳ねて杉元の背に隠れてしまった。その際、アシリパの手から抜けた猫は再び桜紅に擦り寄った。
杉「どうしたの?アシリパさん」
白「なになに〜?あ、もしかして照れてる…痛いっ!?やめてやめて!!無言でスネ蹴らないでぇ!!」
さっきまでの緊張感はどこへやら。一瞬でほんわかとした空気が流れたことに桜紅は笑いながら、猫を抱えてアシリパに近付いた。
『私は掬川桜紅。よろしくね、アシリパちゃん』
猫の手を持ち上げて小さく振ると、それに合わせて猫も鳴いた。今度はしっかりと視線が合い、アシリパは笑って頷いた。
─────
杉「………あんたら、その顔ぶれでよく手が組めてるな」
家永の作ったなんこ鍋(馬の腸を味噌で煮込んだいわゆるモツ煮)を皆で囲んでる最中だった。杉元の視線が土方たちに向けられた。
杉「特にそこの鶴見中尉の手下だった男…。一度寝返った奴はまた寝返るぜ」
『(私はいいのか)』
アシリパと牛山の間に座った桜紅は食べながらそう思った。
尾「杉元…お前には殺されかけたが、俺は根に持つ性格じゃねぇ。でも今のは傷ついたよ」
牛・ア「……」
白「食事中にケンカすんなよ」
土「いずれにせよ坑内に月島軍曹の死体が無いか確認するまでは夕張から動けんが、死体が無ければ絶対に判別方法を見つけなくてはならなくなる」
家「私……思い当たる人物がいます」
永「贋物を見抜けそうな人物が?」
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伊瀬(プロフ) - 176さん» ありがとうございます!二章も引き続き頑張りまっす!! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
176 - 一章お疲れ様でした!二章も楽しみです!作品とっても好きです!頑張って下さい!応援しています! (2019年11月10日 22時) (レス) id: b5e0f112ee (このIDを非表示/違反報告)
伊瀬(プロフ) - 、さん» すみませんでした!ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月10日 19時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊瀬 | 作成日時:2019年11月10日 19時