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[肆] 十一頁 ページ13

『ハァ……だめだな、体力落ちてる…』

尾形と別れた桜紅は牛山を探して町中を走り回っていたのだが、走り疲れて壁に背をつけていた。

牛「おっ、掬川」

『あ』

横を通り過ぎようとした牛山が桜紅に気づいた。桜紅が背をつけたままその場に座り込んだので、牛山は少し驚いた様子で「どうした」と問うた。

『いや、ちょっと疲れただけだから』

ちなみに敬語は牛山が嫌だからと言う理由でやめた。

牛「ん?お前一人か?」

『あ、うん』

剥製屋でのことを話そうとした桜紅だったが、その前に牛山が口を開いた。

牛「…ありゃ、尾形だったのか」

『え?』

牛「それがさっき、尾形らしき奴があっち側に向かうのを…」

((ドオォォン

突如発生した爆発音は桜紅たちを含め、その場の全員の鼓膜と体感を刺激した。場所は牛山が尾形を見たという方角で起こっていた。

牛「おい、何が起こった」

「あんた、ここの人じゃないのか。炭坑でまたガス爆発が起きたんだよ。大非常(大事故)だ。すぐに消火が始まる」

牛「近くに火消しが住んでるのか?」

「ちげぇよ。坑口を板と粘土で塞ぐんだよ。空気が入っちゃ火はデカくなる一方だからな」

『逃げ遅れた人もいるのでは?』

男はその言葉に何も答えなかった。
桜紅は一言礼を述べると、牛山と共に炭鉱へと向かった。


─────

少しの人集りの先に閉じられた坑口と数人の炭鉱夫の姿があった。

((スンッ

『! 牛山さん、正面にある入口お願い』

早口で告げてから違う方へ走る背に「お前は」と言う声が飛んだ。

『向こう見てくる!』

背を向けたまま手を振る桜紅にやれやれと牛山は溜息をついた。








「早く板持ってこい!」

((カチャカチャ

「もう出てこないな。さっきの奴らで最後か」

((カチ…カチ

「奥に密集してたからな。かなりの数だぞ今回は…」

((ガチャン

『災難だったな』

尾「!」

銃の確認整備をしていた尾形に駆けつけた桜紅が手拭いを渡しながら言う。受け取ると、煤で汚れた顔ではなく、銃身を拭き始めた。その様子に苦笑いする。

尾「途中、剥製屋の坊やの死体を見つけた」

『…どんなだった?』

尾「瓦礫に埋もれてたわりには、どこか安らかな死に顔だった。もがいた様子もない」

『そうか…』

桜紅は徐に坑口に目を向けた。その頃には殆ど口は塞がっており、最後の一枚が嵌められるところだった。

『彼にとっては、幸福だったんだろうな』

細められた目が赤く光った。

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伊瀬(プロフ) - 176さん» ありがとうございます!二章も引き続き頑張りまっす!! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)
176 - 一章お疲れ様でした!二章も楽しみです!作品とっても好きです!頑張って下さい!応援しています! (2019年11月10日 22時) (レス) id: b5e0f112ee (このIDを非表示/違反報告)
伊瀬(プロフ) - 、さん» すみませんでした!ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月10日 19時) (レス) id: 6b512e48b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:伊瀬 | 作成日時:2019年11月10日 19時

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