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ぼさぼさの、手入れされていない髪の毛に、襤褸切れのようなみすぼらしい服。
年齢は十に満たないくらいか。手足は今にも折れそうで、頬はこけている。見た目だけであれば、貧民街の乞食とそう変わらない。
きらきらと輝く、好奇心に満ちた赤い目だけが、その少女が確かに生きていることを証明していた。
中也が言葉を失くしていると、少女は此方に歩いてきた。
「ねえ、お兄さん」
「・・・ンだよ」
「私を連れてって」
こてん、と首を傾げる少女。
その姿にすっかり毒気を抜かれた様子の彼は、「勝手にしろ」と云った。
「糞ッ、何で来たンだよ手前」
「だってお兄さん、勝手にしろって云ったでしょう?」
此処にいるのは私の勝手ですー、とおどけて、少女は中也の脚にしがみ付いた。
「運転の邪魔だ、どけ」
「ええー」
「いいからどけ!事故ッたら手前も死ぬぞ!?」
「やだー」
少女は尚も脚にくっついたまま、けたけたと笑った。
動こうとしないので、中也は少女の腕を掴み、そこで手を止めた。
中也ほどの体術使いなら、少女を引き剥がすことなど、それこそ赤子の手を捻るようなものだ。
それを止めた理由は唯一つ、少女があまりにも細かったからだ。
華奢で、何の力も無い小さな女の子。そんな子を乱暴に扱うには、中也は優しすぎた。
腕を掴まれたままの少女は、不思議そうに首を傾げた。
「お兄さん?」
少女に見つめられ、ほんの少しの罪悪感が胸を痛める。
・・・だからといって、このまま足元にいさせるわけにはいかない。
そんなときは。
「わあっ!」
少女の体がふわっと浮き上がった。
「何これ、すごーい!」
非日常的な体験に、少女がはしゃぐ。浮かんだ体は暫く漂い、やがて助手席に落ち着いた。
「これ、お兄さんがやったの?」
すごいすごいと褒め称える少女に気を良くした中也は、「そうだぜ」と前を見ながら答えた。
「ねえねえ、どうやったらあんなことできるの?」
「まァ、魔法みたいな奴だな」
「へえ・・・」
それっきり、少女が何も云わなくなる。
どうしたものかと中也が隣を見ると、少女は可愛らしい寝息をたてていた。
「何なンだよ、一体・・・」
中也は、首領に如何説明するか、そればかりを考え、アクセルを踏み込んだ。
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グーフィー(プロフ) - きのこまるさん» まさかのネタコメありがとう。 (2018年12月9日 22時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» 頑張って書きます。 (2018年12月9日 22時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
きのこまる(プロフ) - (新作を)ずっと、待ってた (2018年12月9日 22時) (レス) id: c031244509 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽(プロフ) - 続き!続きが気になるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!! (2018年12月9日 21時) (レス) id: 5947bb1147 (このIDを非表示/違反報告)
グーフィー(プロフ) - 紅羽さん» あざす。 (2018年12月9日 17時) (レス) id: c591818929 (このIDを非表示/違反報告)
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