L O V E .

Umbrella 1. ページ2

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｢……あぁっ、｣
(もう最悪だ！)



今日は定時で仕事も終わった。
更には帰宅ラッシュの時間にも関わらず
珍しく座席に座れたりしてラッキーだったのに…


駅を降りてみれば、
まるでバケツをひっくり返した様な大雨に
せっかくの気分も台無し。


生憎な事に折りたたみ傘も
オフィスに置きっぱなしてきた。
となると、コンビニでビニール傘を買うのが
普通なのだけど、



『すいません、先程売り切れてしまって…』


「はぁ…そうですか」
(皆、考える事は同じって事ね)



で、結局ずぶ濡れになりながら走って
マンションまで帰ってきた訳だ。


そして、今になって気付く最悪の事態。
どうやら今日はラッキーどころか
アンラッキーだったらしい。



｢まさか、鍵失くしちゃうなんて…｣
(あり得ない、よね)



地方から転勤してきた私に、
会社が用意してくれたのはオートロックで
セキュリティも万全のマンション。

慣れない都会での暮らしに不安にならないように、
とやけにお高めのマンションを用意され、
色々と配慮されたまでは良かったものの…


あまりにも頑丈なセキュリティは
時にこういったトラブルには不便で仕方ない。
その証拠に、



｢管理業者が来るまでに風邪引いちゃうじゃん…｣



エントランスのロックは解除出来ても、
鍵が無ければ入れる筈もなく、
管理人さんも居ないので
こうしてドアの前で
既に１時間は待ちぼうけている訳で、



｢寒すぎる…｣



いくら季節が夏を間近に控えているとは言っても
雨に濡れ、水分でずっしりと重くなった衣類と
濡れた髪は容赦なく体温を奪い、体が震える。


髪から滴る水滴が頬を伝い地面に落下する。
これじゃまるで他の住人が見たら
不審者に見えてしまいそうだ。



｢……………。｣
(今日は本当に厄日だ)



だけど、今はドアの前で蹲るように小さく座り、
体を擦りながら管理業者の到着を待つしか術がない。


ふと思わず漏れた溜め息と同時に
エレベーターが止まる音が聞こえた。



｢……………。｣
(管理業者さん？)



ジャラジャラ、と不規則に鳴る物音が
次第に大きくなりもしかして、と顔を上げれば
エレベーター付近から
一人の男の子が歩いて来ていた。


先程の音の正体は、
どうやら彼の黒いスキニーに付いていた
チェーンのようだ。



｢……………。」
(何だ、管理業者さんじゃないのか)



残念、と少し期待した肩を落として
再び重い溜め息が漏れた。
すると、




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