Umbrella 2. ページ3
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「………あ、」
(この子、見た事ある)
ジャラジャラと音を鳴らしながら
歩いて来た男の子が
段々とこちらに向かってくる。
それに合わせて視線を上げれば、
初対面なのに何故か彼に見覚えがあった。
だけど、思い出せない。
もしかしたら同じマンションだし、
偶然に顔を合わせた事が以前にもあっただろうか?
「……………?」
(や、違うな)
私が知る限り、
彼と顔を合わせたのは今日が初めてだ。
だけど、何故だか初めて会った気がしない。
じゃあ、一体
どこで会ったんだろう?
思わず彼をじっと凝視すれば、
彼はゆっくりと私の前まで歩いてきて
正面で立ち止まった。
「………え、」
(ヤバい、見すぎた?)
見下ろすような体制で立ち止まった彼の表情は
マスクで隠れてはっきりとは分からない。
だけど、明らかにムッとしたような表情で
私を睨んでいる気がした。
「あの……」
少し長めの前髪の奥から鋭い視線で
ジロリと私を見つめている。
ゆっくりと舐めるような視線で眺めた彼は、
明らかに私を不審者だと認識したようで…
『………チッ、』
「………え」
(今、舌打ちした?)
ビニール傘とコンビニ袋をぶら下げた片手は
だらしなく降り、空いていたもう片手は
面倒くさそうに頭を掻いていた。
極めつけに舌打ちひとつした後、
彼は耳にしていたイヤホンを外すと
マスクを乱暴に外して何かを呟く。
ボソッ..
『またか…』
「あ………」
(やっぱり見たことある)
彼が何を呟いたのかは聞こえなかった。
それよりもマスクを外した彼の顔に
やはりどこか見覚えがあり、
思わず目を見開いた。
だけど思い出せなくてやきもきする。
一体、彼は何者なんだろう?
すると彼は、
『マンションまで来るとか常識無さすぎやろ…』
「え、ちょっと…」
『もう、これで満足した?』
いきなり私の腕を掴み
勢い任せに引っ張り立たせると、
鋭く睨みを聞かせて顔を覗き込むようにして
強くそんな台詞を吐き捨てた。
そして、ずるずるとずぶ濡れの私を
エレベーターの前まで引っ張りながら
彼はまくし立てるように続けた。
『お姉さん、見たこと無い顔やけど…』
『こんな雨の日まで来るなんて』
『ずいぶん熱心なファンやな…』
ふっ、と小さく嫌味に笑った彼に
何故だか少しだけきゅっ、と
胸を掴まれた気がした。
だけど、何が起きてるのか
私には一切、理解できなかった。
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やよい(プロフ) - ryoさん» こんばんは、コメントありがとうございました!何だかすごく褒めて頂き光栄です(>_<)ありがとうございます、嬉しいです。これからも更新頑張りますのでよろしくお願い致します! (2020年3月17日 23時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - ちなつさん» コメントありがとうございます!すごく昔に書いたお話のリメイクなので自信無かったんですが、気に入ってくださって嬉しいです(^^)実は、私もちなつさんのお話私読みに行かせてもらってます。笑 なのですごく嬉しいです!ありがとうございます! (2020年3月17日 23時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - まりさん» コメントありがとうございます!一気読み、是非ともしてもらいたい。笑 なので私も更新頑張りますね(^-^) (2020年3月17日 23時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
ryo(プロフ) - 初コメ失礼します。とても素敵なお話で、とても楽しみに読んでいます。ちゃんとした小説を読んでいるようで文章力の高さに感心致しました。これからも素敵なお話沢山作って頂けると嬉しいです! (2020年3月17日 19時) (レス) id: cb9873671c (このIDを非表示/違反報告)
ちなつ(プロフ) - めっちゃ面白いです!この作品大好きです! (2020年3月17日 0時) (レス) id: e54f0cecc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やよい | 作成日時:2020年3月16日 16時