S M I L E : )

Make my move 2. ページ11

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｢『ホットココア』｣


｢え？｣



見慣れたホットココアのページを
ぼんやり眺めながら口を開いた俺の台詞に
重なった彼女の声に驚いて
思わず顔を上げれば、



『ホットココア、でしょ？』



あれ、違いました？



なんて、おどけて笑って見せた彼女に
また胸がきゅっと掴まれた。


何でこんなに可愛いんだろう。
彼女の見せる一挙一動に
いちいち反応してしまう自分は
もう完全に彼女に惚れているのだと思う。



｢あ、うん｣


｢ホットココア、一つください｣



にやにやしながらマフラーを外して言った
俺の言葉に、



『じぁあ、ちょっと待っててくださいね』



と、彼女は言ってぺこりと頭を下げて行った。
少しして、



『ホットココア一つ、お願いします』



と、俺のオーダーを頼む彼女の声に
無意識にまた緩む顔。



｢………。｣
(ああ、もう駄目だ)



もっと彼女の事が知りたい。



声をかけなければ、
何事も無く胸の奥に収まっていた気持ちが
まるでダムが決壊したかのように堰を切って
加速していく。


止められない感情を
一体どうやって彼女に伝えたら良いんだろう。



『お待たせしました、ホットココアです』


「…………。｣
(本気で惚れた時ってどうしたら良い？)


『あの、北人さん…？』


「え？｣
(あ゛、しまった)



テーブルの上にだらしなく突っ伏して
うんうん、と悩んでいた俺の頭上から
ふいに響いた甘く優しい彼女の声に
ハッとして、


慌てて顔を上げてみれば
ふんわりほのかに香る甘いホットココアと、
きょとんとした表情をする彼女が目に映った。



「あー、ごめん、ちょっと…｣


『具合悪いんですか、大丈夫ですか？』



そう言って、
少し眉間に皺を寄せた彼女の心配そうな姿すら
たまらなく愛しい。


もし、彼女が俺と付き合ったら
こんな風に俺を心配してくれるのかなー？
とか、妄想は止まらない。



｢や、そうじゃなくて｣


｢ごめん、大丈夫だから…｣



ナナちゃんと、
どうしたら付き合えるか悩んでた。


なんて、勿論口にする事も出来なくて
適当に誤魔化しながら苦笑いで、
また、眼鏡を直す振りをすれば
彼女は少しホッとしたのか表情を和らげて
小さくふわり、と笑って見せた。




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