S M I L E : )

Make my move 3. ページ12

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『なら、良かったです』


「……っ、｣
(そんな顔は反則だって)



たった一言、そう言って安堵する彼女に
また不意を突かれてしまった。



どくん、と一際大きく揺れた胸の鈍い痛みに
思わず無意識に目を細めてしまった。
恋煩いもここまで来ればかなり重症だと思う。



「あのさ、｣
(もう止められない)


『はい？』



もっと彼女の事が知りたくて、
発した言葉に彼女は首を傾げながら
トレーを両手に抱えて立ち尽くしている。


大きな瞳がくるくる揺れる中で、
そっと触れた彼女の腕をそのまま掴み
ゆっくりと視線を合わせた。



『北人、さん…？』


「えっと、今日、仕事何時に終わる？｣



少しずるいやり方かもしれないけど、
こうでもしなきゃ彼女との距離は
なかなか縮まらない。


もどかしい想いをするくらいなら、
少し勇気を出して一歩でも彼女に近付きたいし
一分一秒と無駄にはしたくない。



｢………。｣
(やっぱり迷惑、かな)



じっ、と彼女を見つめて答えを待つ俺の前で
彼女は突然の問いかけに戸惑ってしまったのか
俺の視線から逃げるように
きょろきょろと視線を泳がせていた。



ああ、これは、失敗した。



そう感じて思わず
口から重い溜め息が溢れて、



｢ごめん、やっぱり今の…｣



忘れて、



そう言いかけて、
彼女からゆっくり手を離しかけた時だった。



『今日はあと一時間、です…』


『私、バイトなので』



そう言って、
またふわり、と柔らかな笑顔で
俺に笑いかけた彼女。


少し赤く染まった頬は、
俺の見間違いでは無いと思いたいけど…


都合良く解釈する脳内に自惚れるな、
と、言い聞かせつつ…



「じゃあ、終わるまで待ってる｣


『あ、はい』



ぎゅっ、再び力を入れて彼女の腕を掴むと
躊躇しながらも小さく頷くなり
顔を赤くして笑った彼女を見て、俺も笑った。





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