＿＿Secretive. (秘密主義者) #1 / drm

例 え ば の 話 / Y O U ページ11

.




もはや、ほぼ脳死状態。
そのファイルを手に突っ立ったままぼんやりしていると
少しして、コンビニの入店音が店内に鳴り響いた。




「…い、いらっしゃいませー！」
(うわ、ヤバ、ボケっとしすぎた)




この辺りは住宅街だから、深夜から朝方にかけては
比較的、他の店舗に比べると静かな方だと思う。



まぁ時折、大学生っぽい若い男女のグループが
騒ぎながらやってきたりはするものの
大抵は明らかにブラック企業っぽい社員さん達が
お勤め終わりにふらっとやって来ては、夜ご飯やお酒、
朝方は栄養ドリンクやコーヒーを買っていく。



そんな感じの穏やかな客層が大半を占めているため
来店は少ない方だし、防犯などの安全面も問題無し。
つまり、分かりやすく言えば暇、って事なんだけど…




『すいませーん、レジ良いっすか？』




また知らない間に意識喪失していたらしく
ぼんやりしている間にお客さんがレジの前に立っていて、




「はーい、すいません。すぐ行きますね！」




手にだるまいずごっどさんのファイルを持ったまま
駆け足でパタパタとレジに向かって、
目の前で待ちぼうけしていたお客さんに向かって




「大変お待たせしました…！」




そこまで言い切った所で、すかさずフリーズ。
というのも、まさかのまさか。




「…えっ、えっ、待って待って、嘘でしょ！？」



『ははっ、待って、そんな驚く？驚き具合エグいな…』



「いや、だって、まさか本当に来てくれると思ってなくて…」




数日ぶりに見た彼は、相変わらずの明るさで。
ただ話し方はこの前よりほんの少しだけ、
砕けた言い方に変わっていた。



うん、間違いない。
やっぱりこの人は距離の詰め方が上手らしい。




「あっ…」
(ヤバい、おまけのファイル落としたまま！)




さっき、あまりにも突然の来訪に驚きすぎたせいで
手からバサッと落ちていった例のクリアファイルの存在。



それを今頃になって思い出して、
慌ててレジカウンターの辺りを見渡してみたものの…





.

例 え ば の 話 / Y O U→←例 え ば の 話 / Y O U

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す