Invisibility . ページ21
.
Aと付き合いだして５ヶ月ほどが経ち
８月を過ぎた頃、これまでの平穏な日々が
嵐の前の静けさだったかのように
鳳仙全体を巻き込む壮絶な争いの渦が
少しずつ、だが確実に、
俺達に迫っていた___
『レッドラム、ねぇ…』
道場の麻雀卓の上にトン、と小瓶をおいて
マジマジと中に入った赤い錠剤を眺めるのは
今日も怠そうなテンションの低い小田島。
他の連中は、その出所を探るべく
街じゅうの見回りと聞き込みに行かせた。
だから今、この場には俺と小田島しか居ない。
「鳳仙だけじゃねぇ、他の学校も…」
「得たいの知れねぇ薬があちこち出回ってる」
『どうもこの一件、簡単にはいかなそうだなぁ…』
『噂じゃ、SWORD地区でも出回ってるっつうから』
『素人のやる事にしちゃ規模が大きすぎだ』
「…ああ、俺もそう思ってる」
「けど、まだ情報が少ない中で動くのは……」
小田島と二人、目の前に置いたレッドラムに
目を細めながらそれを凝視して
今の状況を把握するべく真剣な話をしていた。
そんな話の途中、
麻雀卓の上に置いた俺のスマホが
電話の着信を知らせると共に小刻みに揺れる。
その画面に表示された着信は、
Aからで___
「…悪ぃ」
『Aちゃんだろ、出な？』
「………いや、後でかけ直す」
『気にすんなぁ、俺に構うなって…』
「………。」
(そうは言ってもな)
何となく真剣な話をしていた時だったからか
罰が悪く感じて小田島から、良いから出な？
と、何度か促されても何となく
そんな気分にはなれなかった。
それに、こいつの前でAと電話して
またその会話を盗み聞きでもされちゃ
溜まったもんじゃねぇからな、なんて事も
頭の片隅を過ったからだ。
しばらくして、電話が鳴り止んだかと思えば
今度は短めの振動と共にLINEの通知が鳴った…
A今日は早く終わったから鳳仙まで来ちゃった!
A校門の前で待ってるね
「…は？」
ピコン、と画面に表示されたメッセージに
思わず目を細めて間抜けな声が出る。
『へぇ、校門までお迎え、ね…』
「だから勝手に見んの止めろ、っつっただろ」
『ははっ、佐智雄、相変わらず愛されてんなぁ…』
「お前は、話を聞け」
すると、また性懲りもなく隣から身を乗り出して
俺のスマホの画面を盗み見した小田島は
小刻みに肩を揺らしながら笑いだす。
そして、一頻り笑うと満足したのか
今度は俺の肩に腕を回すと耳元でこう囁く…
.
Invisibility 2.→←He also loves her 3.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 575人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やよい(プロフ) - あゆさん» あゆさん→コメントありがとうございます。あと少しで最終話にたどり着く予定なのでもうしばらくお待ちください(^-^)楽しみにしてくださって本当にありがとうございます！ (2020年1月2日 23時) (
レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 続きが気になります (2020年1月2日 22時) (レス) id: 1e4a476949 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - 聖菜さん» コメント下さってありがとうございます！佐智雄メインが探しても無くて作ってしまいました、笑。この先まだまだ長くなりそうですが頑張りますね☆ (2019年12月21日 13時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
聖菜(プロフ) - 凄く感動しました！続きが気になりますが無理せず更新頑張って下さい (2019年12月21日 9時) (レス) id: c9df35a019 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やよい
| 作成日時：2019年12月17日 22時
