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あの日から1ヶ月が経った
宙ぶらりんな気持ちを整理する時がやってきた
歌舞伎の千秋楽公演
Aに渡そうと思ったチケットも
あのズボンのポッケに入ったまま粉々になって
洗濯終えたお袋に
「紙をポッケにいれたまま洗濯に出すな」って
散々叱られた
タマはAにチケットを断られたから渡してないって話してたから
確実にAは今日ここにはいない
決心がゆらがないからちょうどいい
ただちょっとだけ、最後に見て欲しかった
そんな思いをいだきながら舞台に立つと
宮田のアドリブのギャグ以外は
特にそれまでの公演と変わることなく
むしろフラットな感情で舞台が進んでいく
一幕を終えて、舞台裏に戻った時
これで終わろうとしてるんだと
やっと実感が湧いて来た
今日も多いとは言えなくても
俺のファンは確実に来ていて
その人たちは俺が今日この舞台を終えた後に
退所することを伝えるなんて思いもしないだろう
きっとデビューを待ってくれてると思う
俺も十分分かってる
でももう決めたこと
誰にも話さず決めたけど
俺はもうこれ以上ここにいる意味が見つけられない
この状態がいちばんしんどいから
申し訳なさと若干の清々しさを感じて
第二幕に備え
また舞台に上がる
「これで終わりか」
「なんか言ったか?」
となりのタマが聞き返してくる
「いや、なんでもない」
そのタイミングで幕が上がる
それと同時に正面の後方の座席
一幕で不自然にそこだけ空いていた座席に
Aが座ってた
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作者名:だだ | 作成日時:2017年5月15日 19時