君のいる世界 another story ～1～ (ページ5)

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ポッケに雑に入れたチケットを渡す勇気なんて
オレにはもうなくて

「久しぶり、」

そう声をかけてくれたAにタマのマンガを半ば押し付けるような感じで返しとけって言って帰ろうとした

「私より裕兄ちゃんに会ってるんじゃない？直接渡しなよ」

オレだってしばらくタマとは会ってない

タマは今映画の撮影で忙しい

そんな些細なことも、今の敏感なオレには神経逆撫でられる要素でしかなかった

本当なら、メンバーの活躍は喜ぶべきことなのに

そんな小ちゃい自分にもイライラする

何にも言わずに下向いてるオレに気遣ったのか

「暑いしあがっていく？？」

って

相変わらずの柔らかい物腰でAは聞いてきた

「いいよ、」

答えはもちろんノーだ

なんか、今の荒んでる自分をAに見せたくない

「ケーキあるよ！？」

俺は小学生かっつうの(笑)

「ケーキなんかでつられっかよ、お前じゃあるまいし」

その後もAは一歩も譲らず
ケーキを口実に、オレを家にあげた

ケーキ食べながら幸せそうなA見てたら
くさくさ悩んでる自分がアホらしく思えてきた

「いいな、あんま悩みなさそうで」

「何よ、悩みくらいあるし」

「どうせ飯に関する悩みだろ」

「そういうタカ兄にはなんの悩みがあるのよ」

「お前に…言うかよ」

そこまで言うと、Aは今日のオレがおかしいって言い出した

確かに、今日っていうか最近のオレは手がつけらんないほど角が立ってるって言うか、誰にでもイライラしてるから

お前に言ったって何もなんねーよって言ってんのに
食い下がってくるし

しまいには"グループで何かあったの？"とまで聞いてきた

正直、答えんのもめんどくさかったけど

オレの顔を心配そうに見つめてるAの顔見たら、
話して見てもいいかなって思えた

「オレ、やめようと思ってんだ」