君のいる世界～2～ (ページ17)

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加藤さんの指示通りに、今日決まったことをまとめて、仮決めの衣装を作るための布地を発注した

発注とはいえ、専用の問屋だからもう明日には届く

そうしたらデザイン画と寸法を元に、明日からもう衣装作りが始められる

久しぶりに服を作るから手が覚えているか不安だけど
課題で服を作りまくってた学生時代を思い出してワクワクする

こんな感じで仕事は毎日楽しさが増えるけど
それと反比例するかのように家に帰ることが憂鬱になる

退勤の時間になってスマホを見ると

"碧人さん不在着信 20件"

ラインは25個だった

碧人さんも仕事があるだろうに、何でこんなに連絡して来るんだろう
そんなに信用がないのかってちょっと落ち込む

今朝のあの感じだと…

また手を上げられるに違いない

そう考えるとやっぱり家に帰りたくなくなって

『ごめんなさい、今日は仕事長引きそう』

そう送った

嘘は良くない
嘘つくとずっとつかなくちゃならない

そんなことはよく分かってるけど
これ以上碧人さんと一緒にいる時間が増えたら
私は私じゃなくなっちゃう気がして怖かった

私というアイデンティティーは壊される寸前まで来ていて
彼はそれを私が望んだと言い張る

会社の近くのカフェで本を読みながら頭を空っぽにするけど
今この瞬間も、碧人さんは私のことをどうしたら縛り付けておけるか、考えてるんじゃないか

そう思うと身の毛がよだつ思いだった

ヴーー

"新しいメッセージがあります"

どうせ碧人さんだろう

そう思って開くと

裕兄ちゃんのラインだった

『ちょっと、碧くんのことで聞いておきたいことがあるんだけど』

『そこのカフェにいるの、見えてる』

『30分もかけないから出て来て』

どこ！？見えてるの！？

すぐ前にあるガラス戸からキョロキョロ外を覗き込むと
黒塗りの相変わらずデカい車が止まっていた
前に乗せてもらった車とは違うけど

慌てて残りのコーヒーを飲み干し
トレイを片付けて外に出る

後部座席に乗り込んだ