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「市瀬さんのこと信じた俺が言うことやないかもしれへんけど、この間全然否定せえへんかったやん。」


まるで、言い訳をするみたいに聞こえて格好は悪いけど、彼女が何を考えているのか気になった。


「別に、わざわざ否定するまでのことでもないかなって。」


山田さんは淡々と、言葉を連ねる。

背筋は伸びたまま。投げやりな笑みも、そのまま。



「けど、言わんかったら誤解してまうやん…。実際俺も事実を知らんかったら山田さんのことずっと誤解したまんまやったし。」


「誤解くらいどうってことないよ。まあ、殺人の罪をなすりつけられる、とかは困るけど。」



はは、と小さく笑う彼女に、俺は何故か物凄く悔しくなる。



自分の感情を上手く言葉で言い表せへんけど、彼女の態度や言い振りは俺は遠くに突き放そうとしているような気がして。


『分かってくれる人が分かってくれればいい』


まさにそんな感じで、俺はその彼女を分かってあげられる人間の中に入っていないことが、堪らなく悔しかった。



自分でも分からへん。

なんでこんな気持ちになるのか。




たった三日前に初めて話した彼女に、しかも苦手やと思っていた人対してどうしてこんなに必死なのか。





「ごめん。2時から外回りだからもう戻らないと。」


腕時計に目をやって席を立とうとした彼女に俺は我にかえって視線を上げた。


「あ…おん。こちらこそごめん。時間取らせてもうて。」


「わざわざ謝りに来てくれなくたってよかったのに。」


また、や。

また彼女は俺を、突き放す。


ひょっとしてこの選択は間違いやったんやろうか。

またしても俺は後悔する選択をしてしまったんやろうか。



気持ちばかり目眩を起こしそうになり、一度大きく目を閉じ、また開いた。



その間に彼女は席を立ち、座ってたイスをテーブルの中に入れると、



「でも、ありがとうね。」



俺の目をじっと見てそう言った。



「それじゃあ。」



ヒールの音を立てながら遠ざかる彼女の背中をぼんやりと眺め、

確かに動く自分の心臓の音を聞く。




かすかに感じていた目眩はしなくなっていたけれど、その代わり、俺はしばらくその場から動かれへんかった。





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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです!こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年8月7日 18時

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