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バイト ページ5
彼女が指さした先には確かに扉があった。手をかけたところで、ねえ、と呼び止められる。
「志苑、この店で働いていかない？ここに来たのは何かの縁。勿論バイト代は払うわ。恋人ができたのなら何かと入り用でしょう。大した重労働でもないし給料もそこら辺の適当なところで働くよりは全然いいはずだから貴方にとってマイナスな提案ではないはずよ」
そう言って提示された金額は確かに充分すぎるほどだった。彼女の言うようにデートだのプレゼントだのでお金が必要になるだろうからバイトを始めようと思っていた。ならばこれは渡りに船かもしれない。
「試しに明日の放課後にでも来てみなさい。それから決めたっていい」
試せるのならばそうしよう。
わかりました、と言って今度こそ店を出た。
扉を開いて一歩踏み出すとそこは自宅の玄関。家から100メートルほど離れたマンホールに落ちて、そこから3メートルも離れていないドアから出たのに僕の家に繋がっているのはおかしい。おかしい、がそれは今更な気がした。移動時間が短縮されたのだからラッキーとこそ思えど、あえて元の場所に戻ることはない。どうせ明日また会えるのだから。その時に聞けばいい。
靴を脱いで自分の部屋まで歩く。家の中がかつてないほど落ち着く空間に思えるのは何故だろう。部屋に入るなりベッドにダイブして気がつくと眠っていた。
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作者名：志久真 | 作成日時：2019年6月18日 1時
