stuck on you [ナポリの男たち] ページ7
- hacchi
*
三人目の彼女は初デートの観覧車の中で、キスをするタイミングで、別れた。
彼女の濡れた瞳がすぐそばに迫って、俺の吐いた浅い息が、彼女のカールした睫毛を揺らした。
「……ごめん、無理だ。 別れよう」
声は無様に震えていた。
彼女の熱い肩を押して離れて、俺は俯く。耳まで発熱し、もうすぐでのみこまれてしまうであろう情動から、はいつくばって逃れる。
「どうして？」
「……俺よりさ、良い男がいるよ」
問いにかみ合っていない返答をした。ゴンドラが揺れた。
「最低」
彼女はそういって、雑にヒールを鳴らしゴンドラから去っていく。
俺は狭いゴンドラの中で、震える手のひらを必死に押さえつけて、「ごめん」と彼女に聞こえない声量でつぶやいた。
.
あれからニ年たった今、やっと取り戻した冷静な自分であの時の彼女の心情を考えてみると、多分、俺は浮気して新しい女の子を見つけたと見做されたんだと思う。だから返事も有耶無耶に別れを切り出したのだと。
もちろんそんな事実は毛頭ないのだが、勘違いをやり直す手段も、勇気も、今の俺は持ち合わせていなかった。
「あのー、すみません。 隣いいですか？」
レポート作成のため、図書館で参考資料を山積みしていた俺のスペースに、彼女はちょこんと立っていた。俺は眼鏡を外し、小さく会釈する。
「すみません、もうすぐ終わりますので」
「あっ！ いいえー、良いんです。 お気になさらず」
ぼやけた視界の中で、彼女が笑っているのだと推測できた。赤い口元に手を持っていき笑い顔を隠している。
俺は、自分が長いこと彼女を見ているのにふと気が付き、視線をはがした。その勢いで、本を数冊持ち、立ち上がる。
「じゃあ、ごゆっくり」
そうだ駅前のカフェに行こう。甘いものも取りたいし、丁度いい。ここほど静かではないが、学生が勉強していても何ら問題はないだろう。彼女から逃げるように図書室から出た。
＿＿＿＿＿と。
「……ちょっ、…と待ってください！」
背中に体重がかかる。俺はゆっくり振り返る。
「眼鏡、おいていきましたよ」
渡され、放心のまま眼鏡をかける。途端に、視界が鮮明になる。
「すみま、せん…、ありがとうございます…」
彼女は肩で大きく息をしながら、頬と耳の先を真っ赤にして、俺をじっと見ていた。
俺は思わず、コートも荷物も置いてきた彼女に「もしよかったらお昼…」と続けて言った。
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公開するか迷ったのですが供養
好きになってください [wrwrd!]→←答えは決まってる [ナポリの男たち]
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オレンジのチーズ(プロフ) - はじめまして！いきなりすみません！「君に逢う日はいつも雨」の登場人物は キヨ、フジではなくてキヨ、ヒラではないでしょうか？ (2018年8月23日 17時) (
レス) id: 9bc75e39d3 (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - 加茂野さん» はじめまして！読みやすくて素敵だなんてとっても嬉しいです。有難うございます(:_;)ナポ男は特に思い入れが強いのでそう言っていただけるとモチベーションになります(*^▽^*)これからも頑張ります、宜しくお願いしますー！ (2017年10月21日 13時) (レス) id: 75bc61b406 (このIDを非表示/違反報告)
加茂野(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。はちかさんの短編作品が大好きでいつも更新楽しみに待っています…！どの短編も読みやすく、素敵なんですが その中でも特にナポ男の短編が好きです！語彙力無くて上手く伝えきれないのですが、これからも応援してます！ (2017年9月29日 23時) (レス) id: 1b8311c071 (このIDを非表示/違反報告)
はちか(プロフ) - 卯月さん» はじめまして！あろまさんのリクエスト更新しました(*^-^*)ツンデレでもドSでもない…かもしれません…。すみません(*_*) (2017年5月30日 1時) (レス) id: 75bc61b406 (このIDを非表示/違反報告)
卯月 - はじめまして！リクエストさせてもらいます！！あろま先生でツンデレかドSを書いていただけないでしょうか？ご検討お願いします。 (2017年3月27日 18時) (レス) id: ee413df35c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はちか | 作成日時：2017年2月25日 14時
