残暑見舞い【夏油傑】【男主】【呪術廻戦】 (ページ10)

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10.召しませ不安をページ10

「それで」

デザートに用意されていた牛乳寒天のイチゴ添えと緑茶に舌鼓をうっていた時のことだった。

「許してくれた？」

彼に抱いていた不安感は、贅を凝らした食事の数々の前に、まったくといっていい程払拭されていた。
だというのに、それを掘り起こすような、というよりかはこの瞬間まであれほど世話になっていたのに、信用できないとかなんだとかそういった失礼な考えを抱いていたことを思い出したのが心底気分を悪くした。
決まりが悪くなって、デザートを食べていた手を留める。

「あの、あんな失礼な態度をとってしまって、ごめんなさい」

「いや、あれは私も悪かったから」

ゲトウさんはスプーンを持ち、それに寒天をのせ、自分のくちにそっと運んだ。食べて、といわんばかりに匙を差し出す。
断ることもできず、照れ臭くなりながら頬張った。

「それに、あんな話を急に持ちかけた私も悪いしね」

牛乳と砂糖の優しい甘さを堪能している時、彼はそう言った。
急に緊張感が高まって、あの時の言葉が頭のなかで反響する。呪霊、自分の人生を狂わせてきた、あの存在のことだ。これは主観だが、彼は確かにそれを従えているようだった。

「ゲトウさんが産み出しているんですか？その、呪霊を」

「いや、違うよ。私には特別呪霊を従える才能があるだけ、制限もあるけどね」

なんなら今出そうか？と彼は問いかけた。あの美しく恐ろしい白鼬のことを考えると、断ることしかできなかった。

「なんで、自分と、ゲトウさん以外の人には呪霊が見えないんですか？」

少し彼が強ばった顔をした。自分の見たことない表情をしていたものだから、年相応に怯えてしまった。ゲトウさんはそのまま話を続ける。

「今まで知り合いにも、友達にも、見える人はいなかった？…………親、とか」

「誰も居なかったです、両親にも見えなくて……」

やっぱりか、と小さく呟いたような気がしたが、それを気にせず彼は話を続けた。