残暑見舞い【夏油傑】【男主】【呪術廻戦】 (ページ37)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:14,272 hit

訪れぬ朝ページ37

「スグルさんには、友達とか、いたのかな、って……」

苦し紛れの言葉がまろびでる。咄嗟に少し内容が失礼だったな、と思いながら、よく考えもせずに言葉を口に出す。

「いやその、大切な友達、親友とか……」

彼の反応が気になって、すっと上を向く。スグルさんは目をぱちくりとさせて、唖然とした様子でこちらを見つめていた。

「ごめんなさい、何か気にさわりましたか？」

「いや、どうして…………ううん、なんでもないや」

こちらの思惑に気付き始めたのかもしれない。内心ヒヤッとしたものの、彼の様子を伺うに、まだ明らかにはなっていないようだ。

本に栞を挟み、大粒の雨が縁側を打ち付けているのを横目に、彼は話し始めた。

「いるよ、親友」

自分の彼の関係がまだ浅いものであるからなのか、あまりスグルさんの表情が豊かでない印象が自分にはあった。
しかし今の彼の目を見てみると、幸せなだけでない、何か大きな軋轢を残したまま離別してしまったかのような、大きな後悔と悲しみのようなものが読み取れる。
しかしそういった悲哀の感情だけではない。酸いも甘いも分かち合ってきた友との、親友との思い出に浸っているかのような、そういったものの二つが混ざりあったような目をしていた。

少し嫉妬してしまいそうになるほどだった。

「どんな人だったんですか？」

「……そうだなあ」

思い出が多くて選びきれなかったんだろう。口角をやわらかに曲げながら、どこか上の空でいるかのようだった。しばらくして彼は口を開いた。