赤い海 ページ32
洗顔で顔を洗いながら、昨日の事を辿るように思い出す。
自分は昔ゲトウスグルと会ったことがある、発言からしてこれは間違いない。しかしそうであったとして、彼が言ったところの「本当の告白」とは自分の記憶に一切ないものだ。
親しい仲であったという事実、自分は彼に大切なことを伝えたという事実、どちらも捨てられないじじつでありながら、二つが存在していることは論理が成り立たないことを示す。
頭になにも浮かばない。雑念を洗い流すように顔を冷たい水で流す。
自分は彼の事について何も知らない。スグルさんがなにかを隠したがっている以上、当たり障りのないことなら何か聞き出せるかもしれない。自信はないが、そこから何とか情報を引き出すしかない。
足元で白鼬がぐるぐると回ったあと、もう待ちきれないといった様子で方に上ってきた。
蛇口のある場所で作業をするときまってこの子は現れる。手のひらに水をためて白鼬にやるととても喜んだ様子で飲むので、いつもそうしていた。
指先で白鼬の鼻をくすぐる。早くあげようと思い、蛇口を捻る。
不思議なことに、先程まで出ていたはずの水が出ない。おかしい、と思いながら右へ右へと蛇口をひねると、水が一向にでないのにも関わらず、その作業に果てがないことに気がついた。回す手が止まらないのだ。
恐怖を覚え、すぐに彼のもとに報告しにいこうとそれを左に回した。とても固く、全く閉まらない。
どろりと、粘度をもった液体が溢れだしてきた。
まずい、と思い、咄嗟に小刀を取り出す。
それはひとりでに浮き出し、どろどろにした石油のような……呪霊に、立ち向かうように刀身を向けた。
しかし叶わず、それは黒い液体に飲み込まれ、刀としての姿を失った。
目のようなものが浮かび上がる。それはこちらを見据えていた。
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作者名:地獄職人(匠) | 作成日時:2021年1月27日 23時