暑い冬 ページ30
真剣に考えられそうだ。
この言葉はまったくもって意味がわからなかった。自分は人生においてそういったことに現を抜かした経験はない。寝ぼけるなどして、無意識に言ってしまっていたのか?とも考えたが、そうだったとしても、あのように本気で受けとるだろうか。
それに彼とは今回が初対面である。
すれ違う誰しもが振り替えって今一度確かめたくなるようなビジュアルに、天は二物を与えるがごとくの長身、読みだけでも特殊な名前……それらの強烈な特徴をもってしても、自分に記憶できない人物のようには思えない。
もし、そうではなくて、彼と自分が「親しい間柄」の仲であったなら。すべての仮説が形どられ真実となる。
これを否定してしまえば、彼がここに来る理由が尽くなくなってしまうのだ。前述のとおり、自分には彼の記憶はない。
赤子の頃か、はたまた物心つくまえの、保育園ぐらいの事であるか……会ったとすれば、思い出せないのも納得できる。
しかし、そうすれば一番大きな問題と外れてしまう。「本当の告白」とは一体何なのか。
障子が空く音がした。冷たい空気が鼻腔をくすぐる。体が驚いても跳ねないようにするのはかなり難しかった。起きているのを悟られないように神経を集中させる。
二階から自分の布団が運ばれているようだ。何ともない様子で彼は自分を抱き上げ、羽でも扱うように軽々と布団へ寝かした。腕から伝う冷気が、またいっそう彼を想像の範疇外の生命体へと押し上げる。
丁寧に体全体がブランケットで包まれる。おやすみ、とだけ言葉を残し、彼は消えた。
強ばっていた体の筋肉を休める。寝返りをうち、星明かりが窓を突きぬけてこちらを照らすのを見ていた。
リラックスしてきたのか、目頭の奥から目蓋を閉じようとしているような感覚に襲われた。霞んだ視界からは光と闇の緩急だけが確認できる。
考え事をするのは以外に疲れることで、まだ寝てはならないと心で抗いながらも、体は考えることをやめるのを求めていた。
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作者名:地獄職人(匠) | 作成日時:2021年1月27日 23時