黄の奔走7 ページ7
外に出るとすでに日は暮れ始めていた。
『ねぇ、十四松君。今日はもうこのくらいにして、また今度にしない？』
｢……え？
もしかして…楽しく…なかった？｣
『ううん、楽しかったよ。でも、だからこそ、そんなにたくさんの場所を周らなくても、頑張らなくてもいいと思うの。』
｢…？｣
『十四松君、度々聞いてくれたよね。楽しいかって。
……私ね、デートの醍醐味ってどちらか片方だけじゃなくて二人ともが楽しむことだと思う。
もちろん、楽しませてくれようとしてたのは嬉しかった。でも、それで無理してるんだったら私は嬉しくない。』
｢っ！…ぼ、ぼく……っ｣
あ、しまった…
少し言い方を間違えたかもしれない。
最後の"嬉しくない"という言葉の方を聞き取った十四松君は今にも泣きそうな顔になっている。
焦って自分の言いたいことだけを先に伝えてしまったことに思わず後悔した。
…一度整理しよう。
『っ十四松君、違う、多分十四松君は誤解してる』
｢っ…ごかい？｣
『そう…取り敢えずそこに座ってゆっくり話そ？
大丈夫、まだ時間はあるから。』
水族館の近くには大きな河があり、ちょうど今いる場所は河川敷だった。
夕日が河をオレンジ色に染め上げていて、なんとも神秘的だ。
『…私はね、さっきも言った通りデートの醍醐味は双方が楽しむことだと思うの。…十四松君は楽しかった？』
｢うん！楽しかったよ！｣
『…じゃあ言い方を変えるね。…デート中、何か違うこと考えてた？』
｢……｣
『私の目には十四松君が焦ってるように見えたの。』
十四松君の顔からまたいつもの笑顔が消えた。
下唇を少し噛み、俯いている。
…心が傷むけど、ここは踏んばらなきゃ。
本心を明かしてくれないと今のままずっとズレた状態になってしまうだろう。
｢…ぼくっ…ぼく…｣
『ゆっくりでいいよ、言いたいことが整理できてきたら少しずつ話してみて？』
十四松君の背中を擦りながらなるべく優しい声で話しかける。
体育座りをしながら下を向いている十四松君はいつもより弱々しく思えた。
思えば十四松君は朝から様子がおかしかった。
いつもより異様にテンションが高く、私が朝ご飯を食べていないことにも気づかず私を抱えて家を飛び出していた。
十四松君は明るくて活発だから、こういう人だからと決めつけていたせいで、彼の微妙な変化に気づけなかった。
私が十四松君と向き合わなかったせいで彼をここまで追い詰めてしまったのなら、反省しないといけないな…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
milk - 本当に面白い！！この作品は完結がもの凄く気になります…！！続き待ってます！！ (2022年8月26日 22時) (
レス) @page47 id: 1d931b58b6 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き待ってます (2022年8月18日 17時) (レス) @page47 id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - 続き凄く見たいです…もう更新されないんですかね？？ (2020年11月28日 16時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
星猫(プロフ) - 続き見たい早く気になる (2020年11月14日 16時) (レス) id: 7ce7f2c2ab (このIDを非表示/違反報告)
Nori(プロフ) - なり金さん» 再びコメントありがとうございます(*´ `)小鳥が飛び立ったシーンでしょうか？差し支えなければ教えてください…笑カラ松パートでの課題はカラ松語なんですよね。未だに分からない笑 (2020年6月23日 16時) (レス) id: f050346503 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nori | 作成日時：2020年3月10日 17時
