選択 ページ10
．
「この女は元々第七師団にいた鶴見中尉のお気に入りの狙撃手だ。戦争後、怪我による視力低下で第七師団を離れた＿＿＿＿＿だから、今も鶴見中尉と繋がっていると考えてもおかしくない。」
と言いながら、
尾形は私の前に入れ墨を放り投げた。
『?!』
初めて見た。
剥がれた人の皮を。
そこには生生しく、乾燥した血がついていた。
『＿＿確かに去年、鶴見中尉はいきなり私のところに尋ねてきて、その入れ墨の話をした。だけど私には関係ないから…協力しないと断った。
関係を断つために身を隠すように夕張にいたのに、
繋がっているわけがないでしょ？』
「……硯幸人(すずり ゆきと)」
『!!!!』
“A。生きるんだ。
俺のことを忘れて。賢明に、生きろ。”
『…』
「これは鶴見中尉が持ってた入れ墨だ。
これがもしも硯幸人のものだと言ったらどうする？」
『え……？』
冷や汗が止まらない。
そんな、……そんなわけがない。
鶴見中尉は皮を剥がさないと言っていた。
これは硯幸人の皮なのか？
じゃあ、硯幸人は？
殺されちゃった……、…？
「……尾形。もういい。」
杉元の声に我に返った。
「A、落ち着け。
…これは硯の入れ墨じゃない。」
杉元は私の手足の紐を切った。
その瞬間に身体から力が抜けたように、
ふっと地べたに座り込んだ。
「硯幸人の性分は、あまりにも臆病で心配性……石橋を叩きまくる性格らしい。だから、鶴見中尉はお前の名前を利用して、硯幸人と接触をしようと試みるだろう。」
『…』
尾形の声がやたらと響いて不快だった。
杉元が私の両肩を掴んでくれていなかったら、
きっと私は暴走していたと思う。
「……お前には今、２つ選択肢がある。」
尾形は私を見つめる。
やっぱり私は尾形のことが大嫌いだ。
「硯幸人を探すために俺たちと一緒に来るか、それとも鶴見中尉が硯幸人の入れ墨を持ってくるのを待つか＿＿＿＿＿＿＿＿」
ここで、
鶴見中尉はそんなことしないって
すぐ言えたら、良いのに。
心の何処かで鶴見中尉を信じていない自分がいる。
「俺達はお前が協力するなら、硯幸人の命は補償する。」
尾形はそう言った。
硯幸人を探さなきゃ。
誰かが金塊のために、硯幸人を殺す前に。
*
硯幸人
網走監獄の囚人
鶴見中尉の古き友人
アイヌ文化に憧れを持っていた
Aの育ての親
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プスメラウィッチ - 出来れば、尾形百之助オチでお願いします🙏 (2023年1月27日 15時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作者です - 名無し74304号さん» はじめまして。お気遣いいただきありがとうございます。自分のペースで進めていきます。よろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
作者です - もっちさん» ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
名無し74304号(プロフ) - はじめまして、面白いです。続きを楽しみにしています、無理なさらない程度に (2022年12月27日 1時) (レス) id: 969f72f718 (このIDを非表示/違反報告)
もっち - 面白いです、楽しみにしてます。 (2022年12月26日 0時) (レス) @page38 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2022年11月27日 21時
