存在 ページ38
．
尾形 side
203高地に行く前、
二人はしゃがんで、肩身を寄せ合って、
ご飯を分け合っていた。
「…」
別にAと勇作殿が仲良くしていたから、
あのとき勇作殿を殺したわけじゃない。
他に理由はあった。
ただ、たまたま見てしまっただけ。
その翌日、
Aは淀川中佐から日本に帰還するように命令され、負傷者をつれて戻ることになった。
だから、
Aが去ったあとの203高地で、
勇作殿の頭を撃ち抜いた。
日本に戻って、勇作殿の訃報を聞いたAはどんな表情だっただろうかと考えてみたりもしたが、到底想像はできなかった。
奉天会戦前に
Aはまた戦地戻ってきていた。
『あ、尾形＿＿＿＿＿』
と、何事もなかったかのように銃の話ばかりしてきた。Aはいつも通りだった。
奴の中で花沢勇作がそれほど大きな存在じゃなかったことに安心したのを覚えている。
その後、月島軍曹が鶴見中尉と何かを言い争っていることに気づいた瞬間、＿＿＿砲弾が飛んできて、その爆風で皆が吹き飛んだ。
それから俺は気がついたときには、軍の療養所にいて、Aは眼帯しながら、せわしなく動き、負傷した奴らの手当をしていた。
「目…どうした？」
『何かの破片が当たっちゃって……
もしかしたら、もう見えなくなるかもしれない。』
そう、言った。
そして程なくして、日露戦争は終わり、
奴は第7師団を離れた。
理由はやはり視力の低下らしかった。
狙撃手にとって目は生命線。
当初は、本当にそれが原因で離れたと思っていた。
その後、俺も第7師団を離れた。
奴と金塊は無関係だと思っていたが、
茨戸で土方は硯とAの関係性を話してきた。
「第七師団にAという女性がいなかったか？」
どうやら硯は土方を信頼していたらしく、硯が囚人になった経緯やAのことを話していたらしい。
「硯の入れ墨を手に入れるためには、彼女の協力が必要不可欠だ。」
そして土方からの情報を頼りに、
夕張へ向かうと、奴はいた。
再会したとき、
相変わらず気が強く、
殴られても、焦点が合っていないのに、
殴り返そうとしてくるぐらい、
強い奴だった。
それほど強い奴なのに、
今、Aは泣いている。
俺は、奴の身体にある勇作殿を失ったときにできた傷を抉ってしまったらしい。
奴にとって花沢勇作は大きな存在だったのか
と、今ようやくわかった。
＿＿もう、手遅れだ。
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プスメラウィッチ - 出来れば、尾形百之助オチでお願いします🙏 (2023年1月27日 15時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作者です - 名無し74304号さん» はじめまして。お気遣いいただきありがとうございます。自分のペースで進めていきます。よろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
作者です - もっちさん» ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
名無し74304号(プロフ) - はじめまして、面白いです。続きを楽しみにしています、無理なさらない程度に (2022年12月27日 1時) (レス) id: 969f72f718 (このIDを非表示/違反報告)
もっち - 面白いです、楽しみにしてます。 (2022年12月26日 0時) (レス) @page38 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2022年11月27日 21時
