来春 ページ3
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鶴見中尉が尋ねたあと、すぐに冬が来た。
今年の冬も寒かったが、
炭鉱のあるこの街は、
比較的建物の中に入れば温かく、
難なく乗り越えることができた。
私は日露戦争から帰ってきて、
第七師団を抜けてから、銃を持っていない。
でも、今の銃を持たない生活は
私にとっては心地よかった。
耳を劈くような銃音は聞こえないし、
生々しい血を見ることもない。
きっと網走から脱獄したあの人に会うためには、
また銃を持つことになる。
でも、私は戦争には向いていない。
会いたい気持ちと、
銃を持ちたくない気持ちが錯綜し、
私を追い詰める。
だから、私は考えることを放棄して、
答えを出さないように、
その問題から目をそらした。
そうでもしなきゃ、生きていけないと思った。
そうして、生きて、
夕張に春が訪れた。
『サクラマス、１つください。』
「はいよ」
気温が高くなって、今日はすこぶる気分がいい。
つい、贅沢品を買ってしまった。
大きいから捌いて近所の人に配るか、
と、思いながら帰路につく。
中央通りから少し外れた道に入る途中で、
肩をガッと掴まれた。
『!!!!』
その瞬間に片手を取り、
戦闘態勢に入ろうとすると
「私だ。月島だ。」
と、思いもしなかった人物がいて、
私は腰が抜けそうになった。
『え、ぇ、どうして月島さんがここに？』
「少し用があって、立ち寄ったところだ。
もしかして抜けてから、ずっと夕張にいたのか？」
と、問いかけられた。
鶴見中尉が来たぐらいだったから、
みんな知ってるのかと思ったけど、
月島さんは知らなかったんだ。
『そうです。
…この街、住みやすくて。』
月島さんは少し目線を落とし、
こちらを向いた。
「目の調子はどうだ？」
『変わらずです。
先日も病院に行ったのですが、
難しい、と言われました。』
「……そうか。大変だな。」
『いえ、』
「何かあったら相談しろ。
できることはする。」
『すみません、ありがとうございます。』
「しばらくは夕張にいるつもりだ。また連絡する。」と言い、月島さんはどこかへ歩いていった。
何のために来たのか、聞くのを忘れてた。
…聞いても教えてくれなさそうだけど。
＿＿＿＿＿＿しかしまぁ……
月島さんにまで嘘をつくのは気が引けるなぁ。
日露戦争で目を負傷したことは正しい。
でも、視力が落ちたのは真っ赤な嘘。
第七師団から離れるための嘘にすぎなかった。
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プスメラウィッチ - 出来れば、尾形百之助オチでお願いします🙏 (2023年1月27日 15時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作者です - 名無し74304号さん» はじめまして。お気遣いいただきありがとうございます。自分のペースで進めていきます。よろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
作者です - もっちさん» ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2023年1月3日 15時) (レス) id: 2646bdd757 (このIDを非表示/違反報告)
名無し74304号(プロフ) - はじめまして、面白いです。続きを楽しみにしています、無理なさらない程度に (2022年12月27日 1時) (レス) id: 969f72f718 (このIDを非表示/違反報告)
もっち - 面白いです、楽しみにしてます。 (2022年12月26日 0時) (レス) @page38 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2022年11月27日 21時
