悲しみの… ページ5
『…………んっ…』
霞む目を数回瞬きすると白い天井がはっきりみえる。
鼻にくるツンとした匂いにここが病院だと気付く。
そばにある窓から風が入り、カーテンを揺らしている。
『私、崖から……』
あたりを見渡してもリオルとダンバルの姿はない。
起きたばかりのせいかガラガラとした声で２匹の名前を呼ぶ。
もしかして、と嫌な予感を頭に過ぎる。
痛む体をおこしたとき誰かが扉を開けた。
銀髪の髪を持ちスーツを着た青年が入ってきた。
彼の腕には探していたリオルとダンバルの姿。
『リオル！ダンバル！』
彼の腕から飛び出し、私のベットへとくる。
2匹の存在を確めるようにぎゅっと抱き締めた。
「目が覚めてよかったよ」
彼がベットの傍にくる。
リオルとダンバルに目がいってしまい、彼のことを忘れていた。
そのことに恥ずかしくなり、少し顔を赤らめる。
『す、すみません。挨拶もなしに』
「具合はどうだい？」
『まだ痛みますが、大丈夫です』
「よかった」
『あ、あの、貴方は？』
「僕はダイゴ。森で倒れている君を見つけてね」
『そうだったんですね』
ベットに座った状態とはいえ、姿勢を正しダイゴさんにお礼を言った。
あの場で誰にも見つからなかったらもしかしたら私は死んでいたかもしれない。
そう思うと背筋がぞっとした。
頭を下げる私と同じようにリオルも頭を下げていた。
「実は僕を君の元に連れてきたのはダンバルなんだ」
話を聞くとリオルや森のポケモンたちは私の体を温めたり少しでも傷を治そうとしてくれたりしたらしい。
ダンバルはあたりを飛び回り、ダイゴさんをつれてきた。
私の命はこの子達だけでなく、多くのポケモンたちに救われたんだ。
ありがとう、とリオルとダンバルの頭を撫でる。
「……それと君に伝えなきゃいけないことがあるんだ」
顔を上げるとダイゴさんはとても辛そうな顔で俯いていた。
「………もう君は……」
ゆっくりと紡がれる言葉に私は目を見開いた。
「…歩けない」
頭の奥ではなんとなく納得した自分がいた。
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作者名：李公 | 作成日時：2016年9月17日 21時
