三月三日 織田作之助との邂逅(一方的に)3 ページ5
「君は、私の声に恐怖しただろう?君は安全だ。」
何か固いものが床に落ちた音がした。
弥生は其れを拾う為に屈み込み、けれど気にせずに話を続ける。
「太宰に手を出せる様な大物でも莫迦でも無い。うふふ、命拾いしたねェ。」
カチャリと、私の胸元で音がした。
見ると、銃口が私の胸ほぼすれすれの処で止まっている。
善く善く観察してみれば、引き金に指が掛かっており、何時でも私の心臓を撃ち抜ける状態だった。
「大物か莫迦だったら、此の場で撃ち殺している処だった。」
矢張り何でもないような声で弥生は云った。
私は其れを無言で聞く。
銃口が降ろされ、弥生のベルトから掛かっている
「マスター、お会計。」
弥生はスッと立ち上がる。
会計を済ませた後、じゃあねとでも云う様にヒラヒラと手を振って去って行った。
ドアを開ける音がして、ドアが閉まる音もした。
紫煙が動きに合わせてユラユラと揺れる。
私は其れを見送ると、静かに水っぽい酒に口を付けた。
未だ少し寒い、とある三月の日の事だった。
補足(若しくは蛇足)
弥生は、織田作の事を嫌っていた(莫迦にしていた)。
作中云った通り太宰の友人でもあったし、何よりマフィアでありながら人殺さないとか何巫山戯けた事云ってるんだボケェ!って感じだったから。
でも、実際に会ってみて殺す、よりも先に興味が湧いた。
だから暫く観察しようと判断し、去って行く。
観察した処で織田作に惚れてしまった訳ですね。
因みに、去って行ったあと偶然酒場に行く太宰と出会って、再び弥生は酒場のドアを潜ります。
友人M・I、リクエスト有難うございました!何かあれば云って下さい。
残りの人たちの出会い話はもう少し先になります。すみません。
三月四日 vs子供達1 【友人K・Aリクエスト】→←三月三日 織田作之助との邂逅(一方的に)2
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:永魔堂 | 作成日時:2018年11月11日 19時