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三月六日 彼女は目を見開いた後、ゆっくりと其の名を口にした(友人M・Iリクエスト) ページ18

真白い部屋が目に痛い。

初めて其の部屋に入った時の感想は、此れだった。

白い、そして機械音が、五月蠅く鳴り響いている。

此処は医務室なのに、此んなに五月蠅く機械音が鳴り響いていたら、眠れやしない。

絶対僕なら此んな処で寝たくない、と零せば、森さんは隣で苦笑を零した。

無駄にだだっ広い部屋の真ん中に、彼女は居た。

点滴や機械に繋がれて、青白い顔で眠っていた。

伏せられた睫毛が長く、布団の上に投げ出された手は青白く細い。

ふっくらとした唇が、乾燥により、今にもカサカサと音を立てそうだった。

血の気の無い表情が、また違った色をしていて、真白くて痛いこの部屋に更なる痛みを乗せている気がした。

「此の人?」

問い掛ければ、森さんは頷いた。

周りの機械を眺めていたエリス嬢が、期待に満ちた笑みを浮かべて彼女の傍に佇んでいる。

其んなに面白いものでは無いだろう。

彼女に近づき、顔を覗き込む。

一切気付く様子が無く、只目は硬く閉じられたままだった。

全く、此んなに無防備な人がマフィアの遊撃隊隊長補佐だったと云うのだから、世も末だ。

さして思ってもいない感想を舌の上で転がし、唾液と共に飲み込む。

森さんから聞いた話によると、彼女は自分の異能力の暴走によって、強制的に寝かしつけられたらしい。

本当に、此んな人で大丈夫なのだろうか。

ふと思い浮かんだ疑問があり、此ればっかりはやって善いか判らなかったので、後ろの森さんに尋ねる。

「ねェ、眠り姫って接吻で目覚める物じゃないの?」

「触るだけで善いんだよ、触るだけで。」

森さんが手をぶんぶん振りながら云った。

ちぇっ、面白くない。

低く云えば、流石にねー広津さんに殺されちゃうからねーと楽しげな声が聞こえる。

僕としては、死ねたら十分なので嬉しいのだが。

森さんも、僕が接吻したら面白い事になると思っているのだろうか。

考えながら、青白い頬を優しく撫でた。

青白い頬は想像通り乾燥しきっており、かさりと音を立てる。

嗚呼、乾燥肌だと云っていたっけ。

思っていれば、瞼がゆるゆると動いた。

青白い瞼が上へと上がり、黒い宝石の様に濃く、透き通った瞳が姿を現す。

否、宝石よりも濁っていて、何方かと云えば黒革か。

黒い瞳が、僕の姿を映し出す。

嗚呼、僕も同じ色をしていたね。

微笑みながら、僕は口を開いた。

「お早う。君の名前は、何だい?」


友人M・I、リクエスト有難うございました!何かあれば云って下さい。

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作者名:永魔堂 | 作成日時:2018年11月11日 19時

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