三月某日 絶対のマフィア3 ページ15
柔らかい髪を撫でる。
体の震えが大きくなった。
弥生は顔を手で覆う。
小さな、押し殺した嗚咽が、辺りに大きく響いた。
まるで、子供のような泣き方だと広津は思った。
押し殺した嗚咽の中に、ポツポツとした言葉が混じる。
「私、は……ッ……気付いて、あげられなかった……!あんなに、ずっと……見て、たのに……曇る……表情も、影、もッ……何も、気付い、て……あげられなかったの……!……師匠失格だよ……彼の、ファー付き、ジャケット……師匠の……だったの、に……!彼れごと、守って、あげる、って云う……証明、だったのに……!」
広津の手の下の中、弥生の声は段々と大きくなっていった。
嗚咽はなりを潜め、只々主が懺悔の言葉を吐き出すのを待っているようだ。
ああ、と広津は納得した。
立原の彼のジャケット、見た事あると思ったら、何時の日か弥生が着ていたものだ。
休日会いに行ったら、決まって彼の服を着て、
そして、今立原がジャケットを捨てたのは、マフィアである事を捨てる意思表示な様に弥生には見えたのだろう。
ふらりと弥生の身体が揺れた。
ぽすりと広津の方へ凭れ掛かって来る。
死人の筈なのに、弥生の身体は酷く熱かった。
熱い手が広津の服を強く、強く握りしめる。
「うぁ、あぁあああ、ぁ……!」
弥生の未だ押し殺した様な小さな泣き声がくぐもって聞こえた。
ぽたりぽたりと広津の服が濡れていく。
広津は、突き放す事はせずに只あやす様にぽんぽんと背中を叩いた。
其れが更に火を点けたかのように、弥生の泣き声は大きくっていく。
服を握りしめる力も段々と強くなっていく。
溜めまくっていた物を吐き出す様に、弥生は泣いた。
泣き喚く様なみっともない事はしないが、とめどなく溢れる涙が幼子の様であると云っている。
泣き声に交じって時々聞こえる言葉に、「御免」や「寂しかった」や「好き」と云う言葉があるのを聞き、此れはもう本当に色々吐き出しているのだと実感した。
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作者名:永魔堂 | 作成日時:2018年11月11日 19時