【名探偵コナン】世界はあなたの色になる。【から紅の恋歌】

□２０． ページ21

新一 side.



───百人一首を読み上げる音が、ぼんやりとした意識の頭に流れてくる。



「…いけね」



ぼーっとした頭がはっと覚めて、俺はそばに置いてあったメガネを手に取ると阿知波会長の居場所を確認する。

…どうやらホテルからは出ていないようだな。



『んぅ』


俺が動いたせいで目が覚めたのか、丸まって寝ていたAがうっすらと目を開けて身をよじらせる。



「あ、わり…」

『なぁに』



そう言いながらも、俺の肩に頭を押し付けるようにしてもう一度目を閉じてしまう。

…おいおい。



「中々の頑張りや、正直ここまでやれるとは思てませんでした。この辺でちょっと休みましょか」

「まだ…、まだいけます！」

「休憩も立派な練習や。私はおかゆさんでも頂いてきますさかい」



すっと立ち上がった静華さんは、羽織を和葉ちゃんの肩にかけると襖の方へと足を進める。


「和葉ちゃん…！」


いつの間に目を覚ましていた蘭が慌てて彼女へと駆け寄った。

力尽きたようにどさりと前に倒れる彼女のことを支えると「大丈夫…？」と心配そうに声をかける。


「寝かせてあげなはれ。一睡もせんとよう頑張ったわ」

「和葉ちゃん、どうなんですか？」


問いかける蘭に、静華さんは背を向けたまま話す。



「思った以上の実力や。ベスト4は固いやろうけど、決勝まで進むんは正直難しいやろな」

「そんな…」

「人の話は最後まで聞きなはれ」


少しだけ蘭の方へと視線を向けた静華さんが優しく口角を上げた。





───難しい言うだけで無理とは言うてません。競技かるたで大切なんは、精神力と集中力や。この子にはそれがある。心乱さず無心で挑めば、この子にも勝機はあるで。



そう言い残した静華さんは、襖をそっと出て行った。

…競技かるた、か。


すやすやと眠るAを見下ろしてふと思う。
そういやこいつも小さい頃からやってたよな、なんて。




“───新一にもカルタなら負けないもん！！”




球技は苦手で、体力も足の速さも中の下。
でも頭と耳は良いから、競技かるたではいつも良い成績を残してたっけな。

中学の時に先輩に押されて入った部活も続かなくて、それとなく小さい頃にやってたかるたを再開した彼女は関東大会の個人戦で優勝したことがあった。

そんな昔の思い出をしみじみと思い出しながら、小さく息を吐いた。

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