□１７． ページ18
·
《ちぎりき───》
百人一首を読み上げてくれるテープ。
その声を遮って、和葉ちゃんが払った札は新聞を読んでいたおじさんの顔のすぐ横に刺さった。
…あ、危ないね。
ずるずると新聞を下ろしたおじさんは青ざめた表情。
「うわぁ、姉ちゃん、スゲーな！」
喜ぶ子供たちとは反対に、立ち上がったおじさんは「こら！危ねーだろうがよ！」と声を上げる。
…襖、閉めた方がいいかな。
「やっぱりあたしじゃ練習相手は無理よ…」
蘭が項垂れる向かいで、和葉ちゃんも困ったような表情を浮かべている。
確かにこの調子じゃあ、大会で優勝は難しいかもしれない。ただでさえ練習期間がみんなより短いのに。
「こんな時に、Aが居れば…」
「Aちゃんが？」
「うん、Aは前に関東大会の個人戦で…」
この体で、この体力で良ければ。
感じも体も確実に鈍ってるような気がするけど…、
『…蘭姉ちゃん、私が変わるよ』
「え、でも…」
『和葉姉ちゃん、私が相手でも良い？』
うんと伸びをした私は、着ていたパーカーの腕を捲って首を傾げた。
ぱちりと瞬きを1つする和葉ちゃん。
『私でも、物足りないかもしれないけど』
「愛花ちゃん、カルタ出来るん？」
『うん』
蘭が場所を譲るように立ち上がると、私は和葉ちゃんの正面に座った。
子供たちが持ってきてくれたさっきの“ちぎりぎ”の札をぴっと並べると、彼女の目をまっすぐ見る。
『大丈夫、和葉ちゃんなら絶対に優勝できるよ』
だって、服部くんのことが大好きな彼女を見てると分かるもん。
…誰よりも、強い思いで真っ直ぐな彼女の目線には私でも気づける。
《なにわづに…》
にっこりと微笑んだ私に、蘭が揺れる瞳で私を見つめていたことには気づかずに。
序歌が流れ、私はぐっと拳を握ると体重を前の方にかけた。
一瞬目を閉じて息を吐けば、少し前の感覚が戻ってきたような気が…しなくもない。
《────ふく、》
『っと、』
「…え？」
私の払った札は、綺麗に床の間にあるテーブルにぶつかって地面に落ちた。
私を呆然と見つめるのは和葉ちゃんだけじゃなくて、蘭や子供たちも同じだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1062人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
↑ここなっつ↓(プロフ) - お気に入り1000人おめでとうございます！！！ほんっとにいつ読んでも面白くて、hit数の100回分ぐらいは私です笑ピュアっピュアな関係が最高です！ませていただきます！！ (2021年1月26日 0時) (
レス) id: 71253ca668 (このIDを非表示/違反報告)
hihi - 全部読ませていただきました！！とっても面白いかったです！ (2020年4月14日 18時) (レス) id: ce767b5d1b (このIDを非表示/違反報告)
さわおり(プロフ) - すごくおもしろかったです！！新しい映画シリーズ楽しみです！！更新頑張ってください！ (2020年4月10日 23時) (レス) id: 5567e38aaf (このIDを非表示/違反報告)
萌奈 - とっても面白かったです！夢主ちゃんとコナンくんの恋がどのように、進展していくのか楽しみです！ (2020年4月10日 10時) (レス) id: 08309c157f (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - ぜんぶ最高でした！！よければゼロの執行人も見たいです！ (2020年4月2日 10時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
