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□32. ページ33

新一 side.



「それで、知史くんとはいつ知り合ったの?」


そう尋ねると、中岡さんは驚いたように目を見開いて「何故、俺と知史が…」と俺のことを見下ろした。

俺は、本浦さんの撮ったビデオに知史くんと合図を交わす中岡さんが映っていたということを話す。



「知り合ったのは多分…高校3年の時だよね?場所は杯戸公園のグラウンド。自主練している時じゃない?」

「お前…どうして…」

「中岡さんが通っていた杯戸高校の寮は杯戸公園の近くだし、実家は群馬だって聞いたから寮生活かなと思ったんだ」


その通りだったのか、中岡さんの肩がぴくりと揺れたのが分かった。


「中岡さん、練習を見てた知史くんに声をかけたんでしょ?…昔、中岡さんがカズ選手に声をかけられたように」


はっとしてまたもや驚いた中岡さんは、少しすると目を伏せて口を開く。


「ああ、俺と知史が初めて会ったのは高3の春…お前の言う通り、杯戸公園で自主練している時だ」


過去の情景を思い出すかのような口振りだった。

俺はその話を黙って聞く。


「生まれつき体が弱く、激しい運動はできない知史だったが、少しずつ俺の練習に付き合うようになった」


そんな2人だけの練習はその年の冬まで続いたらしい。…つまり、高校選手権を勝ち抜いて国立で決勝ゴールを決めた時も含まれている。

2人で祝杯を上げた時に、リストバンドも渡したって。



「でも、2月に中岡さんがバイクで事故を起こして、知史くんとの関係が終わってしまったんだね」

「ああ…手術に続く半年間のリハビリも上手くいかず、俺は逃げるように南米に発った」



そして今年の6月に杯戸公園を訪れた時に4年生の知史くんがサッカーをやっているのを見つけたらしい。

…体は弱くたって、サッカーチームに入っていた知史くんを。

ベンチで応援することしか出来なかった彼が1度だけ入れた試合。その試合でゴールを決めたら祝杯を上げようと約束し、その約束通りに彼はゴールを決めた、…と話す中岡さん。


「あれを見て、俺はもう一度やり直そうと思ったんだ。…ところが、」


そこで中岡さんは言葉に詰まる。
…聞かなくたって分かる、その先に続くのは知史くんが亡くなった後の話だってことは。


「…それで、小五郎のおじさんとサポーターの人達に復讐しようと思ったんだね」






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ぱぴこ(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!!そう言っていただけると嬉しい限りです!!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2019年5月23日 20時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
- おおおお毎回お話が面白すぎて毎日楽しみです!頑張って下さい! (2019年5月22日 18時) (レス) id: fc9bd81442 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぴこ。 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月18日 22時

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