おわれる者

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第四話ページ5

雄英高校入試が迫って、教員はバタバタと忙しなく動いておりAもそんな教員達の1人であった。Aはと言うと、資料を運ぼうとしたのはいいが、重く、更には前が見えないという最悪の状況にいた。

｢手伝いましょうか？｣
そんなAに誰かが声をかけた、彼女の視界は紙で埋まっており誰だか分からないが、どうせなら手伝ってもらおうと
｢すみません…お願いします｣
と言った。するとどうだろう。開けた視界には平和の象徴。驚かずにはいられない。
｢オ、オールマイト…。すみません、ありがとうございます｣
｢いえいえ、大丈夫ですよ｣
彼女は申し訳ない気持ちでいっぱいそうにしていたが、彼にとってはおいしい話である。彼女を手助けするついでに話したり、なんなら目標である電話番号を聞けるチャンスなのだから。
｢この時期は毎年ですか？｣
｢そうですね。進級の準備もあるので…大変なんですよね｣
｢ウィンディーは来年、3年B組担任なんですよね｣
｢そうですね。彼らも、あっという間に3年生になってしまいました…。私のクラスに｢通形ミリオ｣っていう生徒がいるのですが、彼の“個性”は｢透過｣で非常にコントロールが難しいんです。けれど彼は日々個性を磨いていて、努力家…なんですよね、人一倍。2年後半から成績も上がってきて今じゃ上位者にランクインしています。彼はいつも明るく、見ている私まで勇気が出てきます。」
｢生徒のことをよく見ているんですね、同じ教師として尊敬します｣
｢平和の象徴に尊敬だなんて、恐れ多いですね｣
｢そんな、とんでもない｣
｢ふふ、そうですか？ありがとうございます｣
自分の生徒のことを話し笑う彼女は、とても愛らしくオールマイトは言葉に詰まる。
｢…あの、もしよかったら敬語はずしていただけませんか｣
｢え？｣
オールマイトの言葉にAは目を丸くする。
｢すみません…図々しかったで｢そんなこと、ないです｣……え？｣
今度はオールマイトが目を丸くする。
｢あの、私のこと呼び捨てにしてもらって大丈夫です。私もオールマイトとはお話したかったので｣
｢いいんですか？｣
｢はい｣
｢ありがとう…改めてよろしくA｣
｢えぇ、よろしくオールマイト｣

話している間、どうやら目的の場所に着いたらしく、二人はそのまま別れた。彼は本来の目標である｢連絡先を交換する｣ということを忘れていたが、大きな一歩を踏み出したことに満足するのであった。