推しが路地裏から飛び出してきた。[ 終 ]

Q . 彼女のことが好きですか。 ページ44

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冴 side





気づいたら手遅れ、という言葉があるが、
そんなものは知らないつもりだ。




別に、なんとも思ってなかった。

馬鹿みたいに真っ直ぐなやつ、としか思ってなかった。





そこら辺にいるファンと変わらないと思ってた。
それなのに、気づいた時には、

俺の心に入ってきて、





簡単に狂わせるから。


それが気に入らねぇ、
腹が立って仕方がねぇ。

なんで、俺のことは拒否したくせにあいつといるんだよ。





そうやって、募っていく感情の正体を、
知らないほど子供なんかじゃなかった。

散々振り回しといて、なんて言われるけど、





俺だって振り回されたんだ。


揺れるような影を見つめて、
たった1人の街の中。





そういや、ホテルには夜になってから、

帰ってこい、って言われたな。





ぼんやりとしたような事を考えながら、
足を進めていたのは、あいつがオススメしていたとこ。

投げ捨ててしまったキーホルダーを見つめた。





ため息を吐き出してから、

ぶらぶらとするしかねぇな、
なんて思いながら、歩いていた先で。




たった1人、誰かを探す姿が目に入る。


けどどうせお前は、
俺を求めやしないんだろ。





諦めようとしてたんだから、

俺の事を捨てたんだから。
何度も傷つける度に、




俺が泣かせた、と思う度に、

ズキっと痛む心の理由なんて、分かりたくもなかった。






揺れるような瞳を見る度に、
何でこいつなんだろうな、なんて思う。


よくあるインタビュー。





ナターシャのことがある度に問いかけられること。




Q . 好きな人はいますか。






その問いかけに、答える日が来るなんて、
思いもしなかった。


いつもテキトーに流すだけだしな。





聞き方変えろよ。




Q . 彼女のことが好きですか。






その問いかけの答えは、
最初っから出ていたのかもしんねぇ。


あの日、出会った時から。





普通なのに、普通じゃねぇお前がいたから。


鳴り響いたクラクションに、
あいつの腕を掴んで引き寄せる。





人混みの中に流れ込んで。


あーー、お前こんなに小さかったっけ。
こんなに細かったっけ。






何も知らねぇんだよな、お前のこと。



好きな食べ物も、嫌いなものも、
なんで好きにのかも、なんも知らねぇや。


冴｢馬鹿なヤツ、｣





俺に呟いたのか、目の前のこいつに呟いたのか、



そんなことも、分かりやしねぇ。

｢お前に惚れた、俺の負けでいい。｣→←あなたを見つけたい。

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